BL映画プロデューサーに聞く! 男同士の恋愛の魅力と、BL映画界の将来
乙女に人気のボーイズラブ(以下、BL)の世界。BLと口にするのがはばかれたのは過去の話、漫画作品だけでなくBL映画にBLポーズ写真集まで誕生し乙女を中心に支持されている現在。そんななか、BL映画『美貌のディテイル』がアマゾンの日本映画ベストセラー部門(6/16付)で第8位になるなど、映画が特に盛り上がっているよう。そんな追い風を受けて2010年の夏は、まさかのBL映画公開ラッシュ! 8月公開の映画『愛の言霊~世界の果てまで~』、9月公開の『純情』でプロデューサーを務めた三木和史さんに、作品のことからBL映画の将来に至るまで、果ては男性から見たBLの世界について根堀り葉堀りうかがっちゃいました!
■ボーイズラブ……それは即ち、100%純愛である!
――公開が控えている映画『愛の言霊~世界の果てまで~』、『純情』をはじめ、三木さんはBLの映像作品を多数手がけていらっしゃいますが、BLに携わることになったきっかけを教えてください。
三木和史(以下、三木) 2006年から『スキトモ』『いつかの君へ』とBL要素のある作品を企画制作し、07年に公開された『愛の言霊』と「タクミくんシリーズ そして春風にささやいて」がほぼ同時に携わったBL作品だったと思います。この2作品に携わる前に、杉浦由美子さんの「オタク女子研究 腐女子思想体系」(原書房)を読んでいて、BLの世界観や腐女子と呼ばれる女性の考え方は非常に興味深いなと思っていたんです。同時に、ファンが多いBL作品をちゃんと実写化すれば、映画的なビジネスチャンスとしてもありえるんじゃないかとも思いました。『愛の言霊』はマンガ原作なのですが、実際に読んでみたら普通に面白くて、これは映像化にも向いていると確信したんです。
――『愛の言霊』のどんなところに惹かれたのですか?
三木 BLなので男同士の恋愛が描かれているわけですけど、『愛の言霊』は男女の恋愛に置き換えても、とても純粋なラブストーリーとして成立するんですよ。相手のちょっとした仕草にドキっとしたり、痴話ゲンカしたり、恋愛描写がすごくリアル。カップルがただ男同士というだけであって、本当に現実感のある恋愛をしているんです。男同士のピュアでリアルな恋愛を丁寧に実写化したら、面白いだろうなと思ったんですよね。 また、これは原作者・紺野けい子さんの作品の特徴なのですが、必ず女性のキャラクターが出てくるんです。女の子が主要キャラとして登場しながら成立しているBLマンガはすごく珍しいんですよ。女の子がいることで世界観に現実味が増し、BL特有のファンタジー感が薄れるので、映画にしやすいというのも魅力でした。
――二次元が三次元になると、原作ファンの間で賛否両論の意見が飛び交うことが多々ありますよね。BL作品を実写化するにあたって、演出や見せ方の面で気をつけていることはありますか?
三木 作品の中にある、精神世界を壊さないことです。そのために、描写は原作通りに描かないことがよくあります。たとえば『純情』は、映画では本当にピュアなふたりが描かれているんですけど、原作はセックス描写の多いマンガ。ストーリー自体は、”肉体関係は結ぶけど、心は高校時代のままでいつまでも純情なんだよ”という、本当に純粋なお話なんですけど、3分の2ぐらいはセックスシーンなんです(笑)。二次元のマンガではそれは成立しますが映像で忠実に再現してしまうとただのエロ映画になってしまうので、ふたりの心理描写を丁寧に描いています。
――BLの中には過激なセックス描写がある作品も少なくないので、それをそのまま映像にしてしまうと、ビジュアル的にも厳しいものがありますよね。演じている俳優がどんなにイケメンでもやはり生きた人間ですから、生々しさもありますし……。
三木 そうなんですよ。マンガであれば、男同士が裸で愛撫し合ったり、喘ぎ声をあげたりしても、キレイじゃないですか? でも同じことを実際に生身の人間がやると、どうしてもキレイにはならないんですよね。ストーリーがどんなに良くても、一気に美しい世界観が崩れてしまうんです。ストーリーの本旨をいかに表現するかも大切なんですけど、やっぱりね、ちょっとした仕草が一番大切だと思うんです。『愛の言霊』であれば、ケンカして、チュって軽いキスで仲直りするとか、実はああいう自然な振る舞いがいいんですよ! キュンとくる。僕みたいなオッサンの胸もキュンとするんです(笑)。
――『愛の言霊~世界の果てまで~』には濃厚なベッドシーンがありましたが、見せ方として気を使った点はどんなところでしたか?
三木 生々しくならないように、でもちゃんと色っぽく撮ってほしいと、監督の金田敬さんにお願いしました。金田さんは、ちゃんと”エロス”が撮れる人なんです。エロスはただの”エロ”とは違って、描くのにテクニックが必要。「このふたりは、こんなことしてるんじゃないかな……」と、観る側の想像をかき立てるのがエロスだと僕は考えているんですけど、金田さんはそれを上手に表現してくれます。
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たしかに純愛
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