「一人の人と何十回何百回と……」哀しさ漂う熊田曜子のセックス論
熊田曜子が、先日発売された『Juicy Girl featuring 熊田曜子 Love Sex & Love Body』(講談社)で、セックスについて次のように語っている。
「普段、セクシャルな面を出す仕事をしていますが、そういう仕事をしているからこそ、私のセックスに対する意識は、どちらかというと堅実だと思います」
「大切なのはメンタル面、『気持ち』ですよね。だって、本当に好きじゃなかったら、ギュッと抱きしめるのもイヤなはず」
「セックスはいろいろな人とするよりも、一人の人と何十回何百回と回数を重ねるほうがいいと思う」
「セックスでキレイになれるというのも、好きな人とするからこそのこと」
「好きな人とする」ことにやたらこだわるあたりが、いらぬ哀しさを漂わせている。「本当に好きじゃなかったら……」「いろいろな人とするよりも……」そんな表現の中に、低俗な読者は魂の叫びを聞くのだ。”枕営業をしてる”なんて週刊誌に書かれた私だけど、やっぱり好きな人とするのがいちばんだよ……。空耳だろうか。空耳だとしても、読者の妄想をかきたてる一冊であることは間違いない。
三十路前後に、多くの女性タレントは生き残りをかけて道を模索する。もっとも”アガリ”は、金持ちと結婚してセレブタレントになること。そうでなければ、庶民派ママタレとして料理本を出版。あるいは結婚せずに、”負け犬キャラ(一般的には死語だがテレビではいちジャンルとして確立している)”として自虐トークで笑いをとる。いずれにしても女性ファンを獲得することが求められる。
熊田曜子も28歳。一時は「激やせタレント」という活路を見いだし、ダイエット本を3冊出版した。熊田曜子で3冊も本が出るのだから、ダイエットというジャンルはよほど手堅いのだろう。海老名美どりで4冊、岡田斗司夫で6冊(!)も出てるくらいだ(ちなみに熊田曜子のダイエットは、夕食に抹茶フラペチーノだけ、たいやきだけということもあり、良い子は真似しちゃいけませんレベル)。そうしてカラダ改造が行き着くとこまで行き、三段腹の元グラドル小阪由佳に「全身整形」などと罵られ、もう打ち止めか……と思ったら、今度はセックスときた。
禁じ手を使ってしまった。そりゃ「セックス」の4文字はF1層も大好きだ。公に口にすれば、さばけた姉御に変身できそうな気もする。だが、芸能界の薄闇にかすむ熊田曜子に、「セクシーの基本は『品』があること」と諭されたところで説得力があるだろうか。「服の脱ぎ方」だの「ベッドでの待ち方」だの指南されたところで参考にしようと思うだろうか。思うとしたら、初潮が来たばかりの小中学生くらいだろう。故飯島愛のようなポジションを狙うのならもっと真面目に語るべきだし、杉本彩のようなポジションを狙うのならもっとキワモノになるべき。ただ「セックス」と言えば、同性の支持を得られると思ったら大間違いなのである。
だが、そういった迷走も含めて熊田曜子の魅力なのだと肯定したい。熊田曜子には、堕ちるか堕ちないか、ギリギリのところで踏みとどまるタレント特有の哀しみと危うさとド根性がある。この感じ、「(セミヌード撮影は)初エッチより緊張した」と唐突に発言した後藤真希にも共通している。まぶしく輝くばかりがタレントじゃない。端が黒ずみ、光度が落ちた蛍光灯も芸能界の侘び寂び。永久B級グラドル熊田曜子、そこにいて、がんばって。フルヌードやAV出演を期待する声もあるが、とどまりの美学を貫いて。横チチ出してもビーチク出すな。
(亀井百合子)
『Juicy Girl featuring 熊田曜子 Love Sex &Love Body』
「しんす……」ってのど元まで出かかっちゃうけどね!
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