読者ヌードに、誌面上での整形体験……「美STORY」が笑えない次元に到達
「ニッポンの40代はもっともっと美しくなる!」というコピーを掲げ、「若く美しい」ことをひたすらに啓蒙してきた「美STORY」。顔のパックをしたまま掃除機をかけたり、年下パーソナルトレーナーとの”アヴァンチュール”を推奨したりと、もはや「漫画か!」とツッコミたくなるような同誌の魅力に、私をはじめサイゾーウーマン読者もきっと虜になっていたはず。ところが今月の「美STORY」は”理性”という防波堤が決壊したかのよう。ものすごい荒波が同誌を襲っています。「どうして?」という想いを胸に、サイゾーウーマン読者の皆様に新生「美STORY」の世界をご案内したいと思います。
<トピック>
◎実況・45人の「ぶちゃいく」脱出作戦!
◎人生変える! 読者ヌードです
◎愛も女も磨かれる! ”えっちコスメ”使用報告
■読む人を混乱させる、衝撃ページ!
まずは「人生変える! 読者ヌードです」からご案内します。このページの直前まで、先日発売した写真集『BALLERINE』(幻冬舎)で見せたヌードがあまりに肉感ゼロで「鋼のヌード」と揶揄された草刈民代のインタビューが掲載されていることに、いろんな味わい深さを感じてしまいました。
肝心の読者ヌードは、ごく一般的な読者から選抜されたという39歳~51歳の6人が、見事に裸体を晒しています。桃尻もレーズンのようなビーチクも晒し、どなたも年齢とはかけ離れた、素晴らしいプロポーションを披露されているのですが、よくよく読んでみると、ヌードモデル合格発表から4カ月、みなさん死に物狂いの努力をされたようです。中にはバレエ、水泳、ゴルフ、ヨガと運動を4つも掛け持ちしたり、プラセンタ・コラーゲンを毎日摂取したり。
それぞれ応募動機も紹介されているのですが、反抗期以降会話がなくなった息子に背中を押されたからとか、夫の死に直面し「人生何があるかわからない」と悟ったからなど、ご本人にとっては本当に意味深いヌードになっているよう。しかしそれを素直に受け取れないのは、これまで「美STORY」が、読者の日常に潜む不安や不満を一切見なかったことにし、「若く美しい」ことしか推奨してこなかった報いを受けているのだと感じました。つまり、「不幸」を共有してこなかったゆえに、素直に「感動」も受け取れない――。これが「婦人公論」だと号泣したと思いますが、「美STORY」だと苦虫を噛み潰したような顔で見てしまうことになる要因かと。どうして「美STORY」のヌードについて、これほど言葉を重ねて説明しているか自分でも分かりませんが、それほど読む人を混乱させるページということで、ご理解頂ければ幸いでございます。
■体の良い裏サイトのような……
「指令・『セレブちゃいく』のビフォー→アフターを暴け!」というページでは、Dr.ウサコという覆面整形外科医を解説役に、ハリウッドセレブの整形事情を晒すという、おどろおどろしいフォントと配色で構成されているような芸能裏サイトと同様な内容を。それでも写真やレイアウトが美しいので、キレイな読み物ページに。しかも、芸能裏サイトですと、「こんなに整形しやがって!」という論調なのに、「美STORY」だと「経済力が顔に出てる!」「賢く美容医療を味方にしてほしいですね」とほぼ前向き。広告も美容系ですし、なにより美容整形外科医が解説しているのだから、当然と言えば当然の方向性ですね。
で、美容整形を晒されたのは、アンジェリーナ・ジョリー、ニコール・キッドマン、キャサリン・ゼタ・ジョーンズなど10人。「おでこにボトックス」「プロテーゼで鼻筋を細く」など、「もうやめてあげて!」というほどに、細かく的確に解説しています。
そして、またしても読者を捕まえてきては、「キャサリン・ゼタ・ジョーンズコース」(目の下、法令線のクマ治療、アゴのボリュームアップ、AHAピーリング、目尻と顎のボトックス)、「SATCのサマンサコース」(額とエラにボトックス、おでこなど4カ所にヒアルロン酸、美肌マシン・ライムライトなど)を体験させるという力技。さすがにメスを入れるような外科的な施術はなかったものの、ボトックスの安全性が確保できていない中で、この特集はグレーゾーンかと。美容マニアに喜ばれる最新情報と、安全性の狭間に立つ編集部の苦悩をひしひしと感じさせられるページでした。
今月号は読者ヌードが濃厚すぎて、メーキャップアーティスト・藤原美智子にメークしてもらった椿鬼奴が、リアルに藤原美智子の双子のようになってしまったとか、益若つばさに憧れて間違った方向に進んでいる山咲千里が広告ページに登場しているとか、みなさまにお伝えしたいことが吹っ飛びそうになりました。「読者ヌード」と「誌上整形」を掲載することで、今まではまるで違うステージに突入してしまった「美STORY」。「美への狂気」にこの先も付いて行けるか(行くべきなのか)、熟考する時期が来たようです。
(小島かほり)
表紙から怖いもん
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