「政治とカネ」のカネはどうしてカタカナ表記なんですか?
気になって仕方がない素朴なギモンを直接企業に聞いてみよう、という本連載。
先日、電車の中でフレッシュマンらしき男性が、狭い座席に座りながら日本経済新聞を読んでいる姿を見かけた。なにか懐かしい感じがして、ちょっと笑ってしまった。iPhoneで毎日新聞が無料で読めてしまう時代に、紙の新聞を大きく広げている姿は、もはや絶滅危惧種としての異様なオーラを放っていた。読んでいる人が若者なら尚更だ。その異様な姿も気になったのだが、実はもっと目を引いたのが、その新聞の一面に書かれている文字である。今回のネタはコレだ。
「政治とカネ」
と、その一面には記されていた。「政治」が漢字で書かれており、「カネ」がカタカナ表記なのだ。なぜ? 「金」でいいじゃないか。誰でも読める漢字である。わざわざカタカナにする理由はあるのだろうか? うーん、気になる。そこで「朝日新聞社」お客様オフィスに直接、聞いてみた。
「新聞ではよく『政治とカネ』と書いてありますが、なぜ『カネ』だけカタカナ表記なんですか?」
担当者(女性) そうですね、特にあの、弊社で「カネ」をカタカナで使うという特に決まりはないんですけれども、「政治とカネ」というカタカナで記載した方が、分かりやすいと申しますか、見た目に判断しやすいと思いますので、そういう記載をさせて頂いている場合もあるんですけれども。
――「政治」と「金」のどちらも漢字表記する場合もあるのですか?
担当者 はい。記事の中では「政治と金」という風に漢字を使っている場合もあるんですけれども、国会などで「政治と金」が話題に上がるときには、カギカッコをして掲載させて頂いてはおります。
――そもそも、新聞上でカタカナ表記にする基準はあるのですか?
担当者 その時々によりまして、まあ、カタカナで記載させていただく場合もありますし、記載する記者の判断でカタカナ表記をさせて頂く場合もございます。
明確な基準はないらしい。記者のジャッジにしては「カネ」表記ブームが蔓延している気がする。しかし、両方カタカナだったらどうだろうか。
「セイジとカネ」
千原せいじと勘違いしてしまいそうだ。まるで千原兄弟のコントのタイトルじゃないか。話を戻そう。
――なぜ「政治」の方はカタカナ表記にしなかったのですか?
担当者 「政治」という漢字はですね、他に読みようがないかと思うんですけども、「金」という字は他に「キン」ですとか、まあ簡単に読める漢字でございますので、そういった間違えもないようにですね、「カネ」という字はインパクトがあるという意味も込めてカタカナで掲載させて頂いているということでございます。
読み間違え防止だったのだ。「キン」、やるな。意味があったのだ。こう間違える人もいるということだ。
「セイジとキン」
確かに意味が分からない。千原せいじと金さんの新コンビ名みたいじゃないか。
話を戻そう。答えは分かった。「セイジとキン」と読ませないための親切心と、タイトルのインパクトを強くするため。その2つが込められた深い表記だったのだ。その親切心、必要あるか? という疑問はさておき、今後「政治とカネ」という表記を見かけたら、「やさしさ、ありがとう」と心の中で思うことにしようではないか。
引き続き、皆さんの素朴なギモンを募集中です。ディープでインパクトのある、くだらないギモンをお待ちしています。
(酒平民 林賢一)
朝日新聞のフランス語表記が大好きです
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