女性誌速攻レビュー特別編・ティーン誌解剖 第4回【全4回】

ローティーン誌のけん引役「ピチレモン」がギャル化に踏み切るワケ

2010/05/14 17:00
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「ピチレモン」(学研マーケティン
グ)6月号

――2010年代の消費社会を支えるであろう現在の女子中高生。様々な欲望が渦巻くこの世代の価値観を、ローティーン向けファッション誌から探っていく。友情、学校生活、ファッション、性、現代の十代の欲望はどこに向かっている?

 ピチレモンの創刊は1986年。「ニコラ」(新潮社)、「ラブベリー」(徳間書店)、「ハナチュー」(主婦の友社)の4大ローティーンファッション誌の中では最も歴史が古い。版元の学習研究社(現・学研パブリッシング)は「中学コース」「科学と学習」等の教育雑誌で知られる。当初はカルチャー誌として創刊された「ピチレモン」。小中学生の文化を知りつくしていた出版社が、その層を対象としたカルチャー誌を創刊したのは自然な流れともいえる。その後、小中学生のファッションに対する関心の高まりから95年にファッション誌としてリニューアルした。

 「ピチレモン」のモデルはピチモと呼ばれ、長い歴史があるだけに出身の人気タレントも多い。加藤あい、栗山千秋、宮崎あおい、長澤まさみらの存在は、その後のローティーン誌モデル=人気タレントへの登竜門という流れを決定づけた。現在最も人気のあるピチモ前田希美は、元「ニコラ」(新潮社)で現「セブンティーン」(集英社)の西内まりあと並ぶローティーン誌二大人気モデルで、NHK大河ドラマ『龍馬伝』への出演が決まるなど将来が期待されている。彼女は現在高二で卒業を控えているが、清野奈名、伊藤梨沙子、星野悠月ら次世代にも人気の高いピチモが控えている。

 雑誌の傾向としてはカジュアルなガーリー系。とにかく全体を通じて女子度が高い。中学生に圧倒的人気の「ピンクラテ」をはじめとして、「ジャムピクシー」、「しまむら」など、競合誌と同じような安価なブランドが多い。しかし、「バービー」、「スコッチハウス」などの1万円以上のアイテムも掲載されファッションのレベルは高い。ファッションページに男子モデルを起用し、デート風のイメージの写真が多いことから男子目線を意識していることが分かる。学校生活に関するページも恋愛に絡めたものが多く、モテ意識は高い。また、心理学や占いのページの充実が高いのも女子度の高い雑誌に特徴的な傾向だ。性に関するページもほぼなく方向性としてはセブンティーンに近い。

■ギャル要素をとりこぼした痛手とその可能性

 長年ローティーンファッション誌をけん引してきた「ピチレモン」だが、ここ数年部数減少の一途をたどっている。2000年代初めには20万部以上あったが現在では15万部台も見えてきた。3年前、急成長したニコラに抜かれてから差は開く一方だ。その原因の一つとしてここ数年のトレンドであるギャル志向に対応できなかったことが考えられる。広告を掲載しているとはいえ高価格帯のブランドを使用するのは、ギャルの安価なアイテムを効率的に購入するという思想に反してるどころか今のデフレ時代に合っていない。また誌面も、ギャル要素を取り入れた競合誌に比べて幼く見える傾向がある。実際、あるアンケートによるとローティーン向けファッション誌4誌のうち、中学一年生の読者が一番多いのがピチレモンだという。


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「ピチレモン」の誌面バランス

 創刊25周年を目前に控え「ピチレモン」は編集長を交代しテコ入れを始めている。特徴的なのが橋本甜歌の連載が始まったことだ。彼女は人気の高いピチモだったが、受験勉強に専念するという理由で中三で卒業。その後ギャル化し、現在はカリスマギャル・てんちむとしてブログや雑誌「Nicky」(竹書房)で活躍している。OGとはいえ、誌面の傾向と違うコテコテのギャルに連載を持たせるのは興味深い出来事だ。当然他にも新しい企画を考えているだろう。追いつめられたピチレモンが今後どこへ向かうのかに注目したい。
(大熊信)


『ピチレモン 2010年 06月号 [雑誌] (雑誌)』

血眼で占いページを読んでました

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最終更新:2013/03/28 17:53