読者モデルと客席でカルチャーを作る原宿スタイルコレクション
――メガメジャー化するために芸能人を呼ぶ手法は日本では多いですよね。
米原康正(以下、米原) 人がいっぱい集まるところに、大きなモノを置けばもっと人が集まってくるという日本の思考回路だよね。街づくりもそういうことで、原宿って、本来の良さは小さい店が集まってるから人が来たわけで、大きい有名店があったわけではない。それを、小さいものを省いて、その代わりにヴィトンや表参道ヒルズみたいな大きいビルを作った。そしたら原宿らしさがなくなって、結局地方都市みたいになってる。元々そこにいた人たちが離れて、観光客が集まるようになってしまった。だから、日本的なシステムでガールズカルチャーをメガメジャーにするとこうなる、という見本がTGCだね。でも、強力なコンテンツだと思う。あんなに広い会場に2万人が集まって、一日に多くのブランドが見れて、芸能人も見られるのはすごいことだと思うの。でも、まずは女の子のお客さんありきで始まったものだから、もう一度客席を見た方がいいと思うんだよね。いまや、洋服がみたい、じゃないもんね。
■カルチャーに理解あるスポンサーに恵まれた「原宿コレクション」
――一方、2回目の開催となった「原宿スタイルコレクション」は読者モデルを全面に押し出していますが。
米原 TGCで女の子をないがしろにしたっていう反省とともに、こちらはいま旬の「読者モデル」でやりましょうと始まったのね。そうとはいえ、「スポンサーに分かりやすくしなきゃ」という考えもいうのもまだ少し残っている。スポンサーからすると、「小悪魔ageha」(インフォレスト)もストリート系も同じ単語の「読者モデル」で、そこが一緒になってるのよ。今回も読者モデルの代表として「Zipper」(祥伝社)のAMOちゃんや鈴木姉妹も出てるけど、そこに参加したスポンサーが「小悪魔ageha」の読者モデルだった桃華絵里や「Popteen」(角川春樹事務所)小森純を出してたりするんだ。そういう幅の広い間違いはあるんだけど、それも3回4回とやっていく中で統一されていって、客席の雰囲気がステージに運営に反映されていくと思う。というのも、ココはメインスポンサーが「メイクアップ技術協会」だから。美容師の専門学校にくるような生徒たちが盛り上がればいいのね。そういう子たちのメインカルチャーって、いまは「読者モデル」だったりするわけじゃない。だから、そのままの姿勢でやっていけば大丈夫。今後の原宿スタイルの課題は、ギャル系とストリート系の違いをスポンサーサイドにどう理解させるかっていうところだと思うんだ。
――原宿スタイルコレクションはメガメジャーイベントに成長すると思いますか?
米原 そもそもこれをメガイベントにしたいのかどうか、そこが境目だと思うんだ。原宿スタイルコレクションも、1回目はヒエラルキーがあったけど、今回は読者モデルもバンドも同じ目線にいるっていう「カルチャー感」を強めてはいる。しかも、メガメジャーになるっていうのは、マスメディアを通さなきゃいけない。でも今は、それを通さなくてもある程度はメジャーになれるわけじゃない。メガメジャーにならなくてもいいっていう選択もあるわけで、その方が俺は無理がないと思う。別にマスメディアを通しておじさんに知られなくても、女の子だけが盛り上がってるカルチャーがあってもいいよね。
米原康正(よねはら・やすまさ)
編集者、クリエイティブディレクター、フォトグラファー。伝説的写真投稿雑誌「アウフォト」や、「egg」「smart girl」を創刊。女の子をチェキで撮影したセクシー&ガーリーな世界観の写真が好評を博し、世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして活躍中。
『Self VOL.2 (2009 autumn) (ワニムックシリーズ 141) (ムック)』
すでにマスにくわれ始めた感もあり。
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