中学生雑誌No.1「nicola」の世界を解剖! いまどき中学生の欲望を探る
――2010年代の消費社会を支えるであろう現在の女子中高生。様々な欲望が渦巻くこの世代の価値観を、ローティーン向けファッション誌から探っていく。友情、学校生活、ファッション、性、現代の十代の欲望はどこに向かっている?
「nicola」(新潮社)は1997年に新潮社が初めて創刊したローティーン向けファッション誌。当初は季刊本だったが、その頃流行の兆しを見せていたジュニアファッションブームに乗り、たちまち成長した。98年に隔月刊化、00年以降は月刊になり、月刊化以降現在に至るまで20万部前後(日本雑誌協会公表部数)の安定部数を誇る。ここ数年表紙のロゴの上に「中学生雑誌ナンバーワン」と冠している、自他共に認めるローティーン向けファッション誌の女王だ。
■強みは蒼井優、沢尻エリカを生んだ専属モデルと情報量
「nicola」の人気を支えているのがニコモと呼ばれる専属モデルたちの存在だ。類似誌の中では後発にも関わらず、栗山千明、蒼井優、沢尻エリカ、新垣結衣など数多くの人気タレントを輩出している。現在最も人気があるのが西内まりやで、すでにドラマやCMにも出演し、女子中学生で彼女の名を知らない人はいないと言われるほどだ。Hey! Say! JUMPの山田涼介との交際報道が出るなど話題にも事欠かない。
彼女を始めとする人気モデルたちが彩る誌面は、女子中学生におけるファッション、学校生活などをテーマにしたものが多い。入学や卒業、修学旅行、夏休み、バレンタインなどメインターゲットである中学生独特の季節感に応じた企画が充実している。充実しているのは企画だけではない。誌面は情報が徹底的に敷き詰められ、商品の写真に文字が覆いかぶさっているほどだ。これは最近の10代の女の子向けファッション誌のほとんどに見られる傾向ではあるが、「nicola」の濃密さは群を抜いている。過剰までの情報を読者が欲している証なのだろう。
■ギャル度、モテ意識は低く、「いかに自分が可愛くなるか」が重点
また、ファッションとして取り上げているアイテムは5,000円を超えることがほぼなく、読者層の金銭事情と見合っている。傾向としては、プチプラと呼ばれる安価なブランドである「Joli&D」や「しまむら」、109系ブランドの中でも安価な「ブルームーンブルー」、中高生に人気の「ピンクラテ」など、ギャル系ファッション誌でも人気が高いブランドが多い。しかしそれらをギャルらしい毒々しさが出ないよう、カジュアルさを意識したコーディネートがなされている。
その他では、恋愛系の企画やジャニーズなどのイケメンタレントを取り上げることも多い。かといってモテはあまり意識されず、自分がいかに可愛くなるかに重点を置いているようだ。H企画はほぼ存在せず、唯一あるのが「nicola保健室」と題された性に関する悩み相談。内容もセックスに関する相談はまれで、生理用品の使い方など極めて真っ当だ。余談だが、「4カ月前、自慰中に中に入ったスーパーボールが未だに出てこない」という相談の画像が、ネット上で話題になったのがこのページだ。
ファッションの傾向やモテを意識しない志向を踏まえると、全体的に中道ギャル寄りといった雰囲気がある。読者が「nicola」を卒業した場合、ソフト目なギャル雑誌である「Popteen」(角川春樹事務所)に流れる例が多いのではないだろうか。
ローティーン向けファッション誌としてトップを走る「nicola」だが懸念材料もある。今年の4月で高校2年生に進級した前述の西内まりやが、「nicola」の慣例により4月1日売り号で卒業してしまったことだ。次いで人気のある、立石晴香と川口春奈の”はるハルコンビ”もすでに高1。彼女たちに並ぶような人気ニコモが育っておらず、次世代のカリスマの育成発掘が急務となっている状態だ。
(大熊信)
『nicola ( ニコラ ) 2010年 05月号 [雑誌] 』
ほぅ、スーパーボールですか……
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