長女、それはもやしのひげをとる女……悲しき長女の性を考えてみた
アラサー女子ならド思春期に見たであろう、ドラマ『想い出にかわるまで』(TBS系)。眉毛の凛々しさも長女っぽい今井美樹が「まだ……そういう気持ちになれないの」といろんなものを出し惜しみしている間に、奔放で豊満な次女、松下由樹に婚約者(石田純一)を寝とられてしまうという内館牧子先生真骨頂の愛憎モノだ。長女=真面目、妹=自由という図式が、柔らかい頭にインプットされた人も少なくないだろう。
長女は本当に損なのか? 長女はそんなにしっかり者? 巷にはびこる長女イメージを検証するのが本書。思いっきりライトに”長女あるある”を集めた『長女ですが、なにか?』(金園社)である。カメラマン&ライターのリコ氏を案内役に、銀座OL長女の会(クミコ・マリエ・ユリカ)が「分かる~」とか「ウチはこうだった~」などガヤを入れつつ、”長女の不条理””長女の秘密””長女の婚活”などテーマごとのエピソードを紹介する。鬱積した長女の言い分が全開の内容だ。その本から見えてきた”長女”という生き物の特性がコチラ。
■長女は家族が大切
とにかく家族が大好きなのである。頑固ものの父親のことを長女は「渋い」と思い、次女は「ウザい」と思う。次女気質の母親は長女にいろいろなことを頼み、プチお母さんとなる。「気づけば損な役回り……」
■長女は恋愛ベタ
恋に対して臆病な長女。告白? できな~い。合コン? ハズかし~。気づけば妹に先を越され……リアル『想かわ』なんてことも。胸キュンと母性をカン違いし、ダメ男につかまる確率も高い。意外にイケメン好き。最終的には「マスオさんみたいな人がいい!」
■長女はバリキャリ
バイト時代から店長よりも仕事が出来て頼られていた長女。就職も、有名企業かもしくは家業を継ぐか。趣味と特技の欄に何も書くことがなくても、資格の欄ははみ出すほど。本音は「実家から自転車で通えるとこ、希望!」
長女ってこんなに良い子だったけ? といぶかしくなりつつも、時折り出てくる小ネタには膝を打つ。例えば、「堅実、おウチ派。高校入学のお祝いにサイドテーブルを買ってもらった」「童話『ごんぎつね』があまりにもかわいそうで眠れなかった夜がある」「こっそりアイプチしているところを妹に見られた。生きていけない!」「好きな遊びは百人一首。おばあちゃんがほめてくれるから必死でやっていた」「後輩が言っていたお世辞を真に受けて好きになりかけた」などなど。
こう並べてみると、「しっかり」は「うっかり」の裏返しだし、おだてにのりやすく人情派なところなど、正に寅さんだ。現代社会では生きづらい昭和の男、だけど誰からも愛される……みたいな。終止ほのぼのした感じで読み進められるのは、そういうところなのかもしれない。そして極めつけのエピソードはこれだ「長女は焼きそばのとき、もやしのひげをちゃんと取り除く」。この言葉に長女体質の全てが集約されている。焼きそばというフツーな出来事に、誠心誠意対応せずにいられないという性。費用対効果ナキ人生……。
そんな私は兄ナシ妹アリのオーソドックス長女。確かに実家大好き、家族大好き。この歳になっても実家から徒歩圏内を離れられず一日一回は顔を見せに行くし、妹の子どもをベタベタに可愛がって怒られるし、取材でどこかに行けばギャラ以上の土産を買ってきてしまうし。長女は図らずとも家族の幸せを一番に考えてしまうものなのか、と読後の満足感に浸っていた私に、一つ下の妹がこう言い放った。
「長女って、昔はちゃんとしてるんだよね。大人になるにしたがって転がるようにダメだよね」
悔しいが言い返せなかった。そんな自分が好きなのも、長女の性質悪いとこ?
(西澤千央)
長女たちのあるあるトークの他、長女度チェックの心理テスト、長女礼賛エッセイ、ホロリとさせる”お姉ちゃんへの手紙”など、長女肯定能力を高めて最強の長女となるための指南書。長女という視点を通じて見る家族の温かさにもホロリ。
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