香椎由宇の不思議番組に飲み込まれた、森三中の”借りてきた大島”
今回ツッコませていただくのは、4月5日に放送された『プロジェクト・カシイユウ』(日本テレビ系)という番組。タイトル通り、女優・香椎由宇がなにかをする番組だ。
で、なんの”プロジェクト”なのか。「指令役兼ナレーター」のスーツ姿の着ぐるみウサギが発表した指令は、「東京発! 世界に向けた 全く新しいフリーペーパーを作れ」というもの。制作期間は2週間、発行部数は3,000部で都内で本当に配布するという。そして、「世界に向けた」内容のため、「文章のない」フリーペーパーにしようという。ウサギナレーターは「ちょっと新しいでしょ?」と自画自賛していた。でも、「文章なし」のフリーペーパーって、どういうことなんだ。
番組に登場するのはもちろん香椎由宇。フリーペーパーの編集長である。そして、”助手”としてあてがわれたのが、森三中の大島美幸。2人は初対面なのだそうだが、その空気がなんとも微妙。
普段は格闘して尻を出したり、下ネタを連発したりと下品な暴走の多い大島が、今回はなぜかニコニコと堅い微笑みを浮かべ、終始大人しい。香椎由宇に対して、「いいですねー」「いきましょう」と、ずっと敬語。編集長と助手という立場的にはいいんだけど、絡みづらいのか。香椎に対しても、「フリーペーパー、ウンコ載せますか?」とか、「私のグラビア載せましょう、ヌードグラビア」とかいった下ネタを爆発させてもよさそうだが、暴走をフォロ−してくれる相方や仲間の芸人もいないからか、人見知りなのか、絡みづらいのか、やっぱり大人しい。
そんな「編集部」の2人が取材先として向かったのは、なんと「世界一のイケメン(番組より)」、レオナルド・ディカプリオ。そして、「世界一のクリエイター」、ティム・バートン。ともに映画の宣伝がらみでの出演とはいえ、深夜の30分番組としてはものすごい豪華なゲストだ。ディカプリオへのインタビューの際にも、”借りてきた大島”は健在だった。
インタビュー直前には、「私、別に守るものないんで、けっこうイケますよ」「全然イケます」と、頼もしい発言を連発。これに香椎編集長も、「イッちゃってもらえると、そこはもう『頑張れ』ってずっと言ってるんで」と、おまかせ発言。しかし……。本物のディカプリオを前にし、シンガポール育ちの香椎が流暢な英語で受け答えをし、女優らしい度胸のよさを発揮しているのに対し、フリーズしている大島。固まった笑顔で周囲をキョロキョロと伺い、完全に挙動不審。芸人らしさは全く発揮されない。「オー、センキュー」とか、適当な受け答えも、また泣ける。写真を撮らせてもらったら、これも緊張からか「パシャパシャパシャパシャ」と、なぜか連射モードで撮影してしまったりした。終了後、「完全にテンパりましたよ、私……」と、大島。
また、都内でストリートスナップを撮るロケでも、「助手」らしく大島が一人で街行く人に声をかけていくのだが、断られると「すいません」とやっぱり弱気。
それでも、「写真約400枚」「総移動距離 300キロメートル」「早朝から真夜中まで2週間」(番組テロップより)、ついに完成した2人のフリーペーパー。その出来栄えは、撮った写真を切り貼りしたもので全8ページ。本当に写真だけ、文字は一切ない。「文章なし」って、文字もないってことなのか? 「全く新しい」かどうかは全然分からないけれど、2人が満足ならよかった。
最後に「どんな人に見てもらいたい?」という質問に、「誰でもいいです」という、香椎らしいマイペースの答えに大島は、「フリーペーパーですしね」「そうですね」とフォローコメント。……2週間で距離縮まってないし。
なぜこの2人になったのか。なぜ「フリーペーパー」なのか。そもそも、「プロジェクト カシイユウ」って、なんだ。さまざまな疑問を残したまま終了した謎の番組でした。
(太田サトル)
笑っちゃダメ! 本気でクリエイター気分なんだから!
【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます】
・自由すぎる批評が光る? 子規のふるさとNHK松山発の俳句番組
・『家なき子』的昼ドラ出演で浮上した、”永遠の安達祐実”問題
・柴田理恵のライバル? ワイプ画面の新スター候補はあの動物……