自由すぎる批評が光る? 子規のふるさとNHK松山発の俳句番組
今回ツッコませていただくのは、4月3日に放送された『俳句王国』(NHK BS2)。NHK松山放送局が、正岡子規の郷里である愛媛を「俳句王国・愛媛県」とアピールするために制作している番組だ。
主宰者(今回は金子兜太氏)と芸能人ゲスト、一般人視聴者が匿名で俳句を披露し、批評し合うという内容だが、匿名ゆえ、そして真剣ゆえに、珍妙なやりとりが繰り広げられたりもする。
たとえば、「兼題 ぶらんこ」で詠まれた一句、「ぶらんこを高く漕ぎたい沓(くつ)を脱ぐ」についての批評。
「『ブランコを高く漕ぐために靴を脱ぐ』っていうのが、それで本当に高く漕げるのかは分かりませんけど、新しいですね」とある男性が評すと、またある女性は「私、ありますよ。ヒールを脱いでブランコ漕いだことが1度」と言い、別の男性は「私はないですねえ」と返す。大人たちが生真面目な顔で、机に横一列で並んだままブランコの思い出話に花を咲かす様は、どこかかわいらしくもある。
また、この回の主宰者で俳人の金子兜太氏は、文化功労者であり、紫綬褒章受賞者という立派な人物で、その批評は率直で辛辣だ。
ある句について「良くない、未熟だ!」と言い放ったり、ある女性の句を「女性っつーのは気が長いのかな。私じゃこうゆうユルユルしたのは、性に合わないですね」と評したり、総評でも「可もなく不可もなくという印象で、普通の感じですね」という身も蓋もないコメント。
ところが、「自由題句」の気に入った俳句を2句選ぶ件では、自作の句が最高点の4票を獲得し、思わずニンマリ。
「これ、私の句なんですが、(選ばれて)ありがたい。同情票かな?」
「俺の句って、リズム感が分かるんじゃないかな」
うれしそうに見回すが、みんなにあっさり「わかりませんでした……」と言われ、「リズム感が私特有かと思ったけど」とコメントするなどやや寂しそうである。
また、別の句を「”春の嵐”っていうのが平凡だね」と一言で斬り、司会の塚原愛アナに「”春の嵐”が平凡というと、他にどんな言葉がありますか」と聞かれると、困った顔で一言。
「とっさに言われても困るけど……。あんたにやりこめられて、思考能力がストップしちゃったよ」
普通の番組であれば、一般人の作品でも、どこかしら良いところを見つけて褒めるだろうに、本人を目の前にしながら「未熟」「平凡」などと歯に衣着せずに言う態度は、むしろ清々しくも思える。
しかし、番組最後にはみんなのハートをつかむ見事なツンデレ発言。
「みんな(自分の句が)選ばれたいから、どういうのが好まれるか探り合いで作ってる感じだね。でも、もっともっと良くなる。このメンバーでもう一度やりたいな。どうだい? もう一度このメンバーでやらないかな」
この一言で、辛辣な批評をされた人たちも、「え~、本当に良いんですか?」「わ~!」と歓声をあげていた。忌憚のない意見・批評をぶつけ合った後の、この団結感。この後、みんなで飲みに行ってしまいそうなほどの繋がりが「俳句」を通じて生まれていく、……俳句よりも参加者の絆を鑑賞する番組のようです。
(田幸和歌子)
友蔵の俳句は斬らないでおくれよ
【この記事を読んだ人こんな記事も読んでいます】
・話すほどに徹子の餌食になった、上原美優とかつみ・さゆりの貧乏トーク
・いかりや長介特番の夫婦コント、オチにまさかの「ピー」音が!?
・ブルーハーツ熱唱の宮崎あおい新CM に見えた、計算されたかわいさ