どうして、単行本と同じように文庫本に紐のしおりをつけないのですか?
気になって仕方がない素朴なギモンを直接企業に聞いてみよう、という本連載。
移動中は文庫本を持ち歩いている。電車内で携帯電話をいじるのがイヤなわけではないが、移動中の読書は集中できるような気がする。その割にと言ってはなんだが、移動中の読書は中断が多い。乗り換えの度に読書を中断。待ち合わせで人がやってきて読書を中断。もちろん、しおりを挟んでおくのだが、私は断然、新潮文庫が好きだ。ご存じの通り、新潮文庫には紐のしおりがついている。これがすごく便利なのは言うまでもない。単行本では他の出版社でも、この仕様を見かけるのだが、文庫で紐のしおりがあるのは新潮社だけなのである。
なぜなのか? こんな便利なシステムを他の出版社はなぜ文庫本で採用しないのだろうか? 気になる! そこで講談社に直接、聞いてみた。
「なぜ文庫本に紐のしおりをつけないんですか?」
担当者 (軽いタッチで)はっ、はーい、それですねー。紐のしおりをつけますと、文庫本の原価が上がってしまうんですよ。で、少しでも安く読者の方に提供したいということですねぇー。
やけに馴れ馴れしいぞ。
担当者 講談社ではですね、紙製のしおりをお入れしています。
――文庫本に紐のしおりをつけたら、値段は結構上がるのですか?
担当者 はい。結構上がりますね。
――100円ぐらい上がりますか?
担当者 そんなには上がらないですけどね、「少しでも安く」「少しでも多くの人に読んでもらいたい」という思いが私どもにはありますのでー。
その気持ちはありがたい。「値段が100円ほどは上がらない」ということは、60~70円くらいは上がりそうだ。しかし、その理屈だと単行本に紐のしおりがついているのもおかしくはないだろうか?
――それでは、なぜ単行本では紐のしおりをつけるのですか?
担当者 単行本はそもそも、定価が高いじゃないですか?
――はい。
担当者 なので、そこに吸収できているっていうことなんですよ。
吸収? よく意味が分からないが、強引な理屈である。
――単行本でも、しおりをつけているのと、つけていないのがあるのはなぜですか?
担当者 ですから、原価の調整だと思いますね、それは。本によっていろいろ原価というか、コストが変わってきますので。出版社によってはつけない単行本もあるでしょう、それは。
担当者がちょっと投げやりになってきたので、このあたりで引き上げよう。つまりは「文庫本の値段が上がるから紐のしおりはつけない」「単行本に紐のしおりがつくかは適当に決めている」ということなのだ。新潮文庫は他の出版社と比較しても、同じ値段(もしくは安いくらい)なので、やはり伝統と歴史がなせる紐サービスなのだろうか。これからも新潮文庫を愛し続けることに決めた。ちなみに、試しに講談社文庫に紐のしおりを糊でつけてみた……。が、すぐに剥がれてなくなってしまったので、皆さんは真似しないように。
引き続き、皆さんの素朴なギモンを募集中です。ディープでインパクトのある、くだらないギモンをお待ちしています。
(酒平民 林賢一)
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これ完璧じゃないすか!
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