中年女性の神髄はココにあり! 「美STORY」という魑魅魍魎の世界
「JJ」「VERY」「STORY」と光文社の女性誌の縦軸とは一線を画した、唯一無二の雑誌を見事に確立している「美STORY」。美容雑誌という体裁を保ちつつ、「すべては私の美容液」と言わんばかりに、「STORY」や「VERY」から溢れだした、中年女性の性(さが)が随所にちりばめられていて、まさに魑魅魍魎。では早速、トピックから見てみましょう。
<トピック>
◎おうちでこっそりカー美(ヴィ)ボディ
◎十和子VS.佳つ乃「美の巌流島」実況中継
◎実録 美のどん底からの”V字回復”物語
■美の2大教祖が満を持して対決
「美STORY」信者の2大教祖こと、元女優・君島十和子さまと、芸妓・佳つ乃さまの直接対決、その名も「美の巌流島」がいよいよ実現しました。一般的には「なんのこっちゃ」の企画ですが、信者および「美STORY」ウォッチャーの私から見れば、まさに夢の対決。メイクからファッション、食事まで事細かに二人の習慣や持ち物を”対決”しています。ただ、対決というほど、差がつかないのが苦しいところ。
興奮して鼻の穴をフガフガさせながら読んだ対談も、字面での”バチバチ感”はなく、謙遜や褒め合うことで、マウントし合っている感が伝わります! 実はケーキやお肉が大好きで油断すると太ると話す佳つ乃さんに、十和子さんは「私は最近、お肉を食べていないんですよ。お肉は大好きだったんですが、主人が一切にお肉をやめたら、痩せて体のコンディションが整ったんです。私もやめてみたら、やっぱり調子がいいですね」と、シングルマザー・佳つ乃さんの弁慶の泣きどころ「夫」を武器にやんわり厭味。「神々の戯れ」は、おっとりとした会話の中に、ピリッとした薬味が入っているようで、対談後の2ショット写真には、編集部から「初めての決闘を終え、微笑を浮かべる美侍。その心中はいかに!」というキャッチコピーが添えられていました。その一言が、この対談のすべてを集約しているようで、シワひとつない二人の笑顔がとっても不気味でした。
■人選を間違え過ぎ!
今月号の大特集「おうちでこっそりカー美(ヴィ)ボディ」では、加齢とともに変化が顕著になる二の腕、背中、太ももなどのパーツを鍛える、マッサージやトレーニングを紹介。そして、冒頭では、各パーツの持ち主をもったいぶって紹介しているのですが、そのメンバーが……。美脚の代表は、女優・浅野ゆう子、”美の腕”代表は、元クラリオンガール・大河内志保、”美背中”代表はモデル・長谷川理恵、そして”美尻”代表は、アナウンサー・小島奈津子……って、え!? なっちゃん!?(ズコー) 尻なんて、叶恭子やら、黒木瞳やら、もっと他に適役がいるじゃないですか。何でなっちゃんなんだろう。そして、なっちゃんの親しみやすい体形が、「なぜ?」という思いに拍車をかけます。
さらには、自宅でできるエクササイズを紹介するページに、モデルとして登場したのが、はるな愛。忘れがちだと思うのであえて言わせてもらいますが、「この人、女のフリしているただのオッサンですから!」。そもそもの筋肉量や体質、ホルモン(愛ちゃんはホルモン注射もしているだろうけど)がまったく違う男性をモデルにしても、中年女性の参考になるとはまったく思えません。「(デザインとしての)絵が美しければ、何でもいい」というスタンスが、「見た目さえ若ければ……」という同誌読者の心理と合致して、恐怖さえ感じました。
■「美」というフィルターをかけた「婦人公論」
女性誌の中でも、特に「美」という強迫観念にとらわれている「美STORY」。外見を磨くモチベーションを保つために、毎月あれやこれやと趣向が施されていますが、今月号はすごかった!
まずは「告白(はあと) 『年下パーソナルトレーナーと誘惑スレスレ』」で読者の衝撃告白を聞いてみましょう。
・トレーニング後のマッサージルームで、ギュッと抱きしめられて。「実は僕、Mさんのこと好きになっちゃった」って。いけないと思いつつも、デートの約束しちゃいました。(M・Hさん 40歳)
・「Rさんのこと、もっと知りたい」と彼は猛アピール。実はこの間、一線を越えてしまいました。若くて逞しい体に、自称ホストの甘いセリフ。11年ぶりに夫以外の男性と関係を持って、ドキドキでした。彼に鍛えられていたおかげで「キレイな体だね」って褒められたし。(R・Tさん 42歳)
しかも、みなさんのお相手は20代で、櫻井翔クン似だったり、大沢たかお似だったりするんですって。まあ、夢物語みたーい。これを読んで、どれほどの中年女性が身もだえするのでしょうか。そしてみなさん、通常料金に上乗せしてパーソナルトレーナーを指名するんでしょうね。ああ、日本全国で昼下がりの素敵な情事が行われていることを妄想し、われわれ20代は身もだえしたいと思います。
もう一つの”下世話”特集が、「実録 美のどん底からの”V字回復”物語」です。結婚・出産→介護に突入し、74kgまで体重が増加してしまった奥さま。「主人の傍にいることも、資格も自分にはない」と思い、別居。2カ月で10kgの減量に成功したのちに、自分から夫に再プロポーズをした、というから驚き。どうして太ったことだけで、夫婦関係が破たんするのかが分かりませんし、この価値観を引き伸ばすと「デブは存在するな」という結構乱暴な結論に達してしまいそうです。確かに「若い」「キレイ」「自分に自信を持つ」というのは、女性としての偏差値に関わって来ますが、あまりにもその概念にとらわれ過ぎ。あ、そっか、だからこそ「美STORY」の信者でいられるんですね。納得!
というわけで、信者以外には響かない企画のオンパレードですが、傍観者として見る分にはこれほど面白い雑誌はないんじゃないかと思うぐらいの破壊力を持っている「美STORY」。今月号の表紙を飾った真矢みきが霞むぐらい、中身が充実していて、今月号1冊で2~3日は楽しめるという腹もちのよさ。最近、中身もページも薄くなっている赤文字系雑誌に飽きた20代女性のみなさん、将来の自分を思い描きながら、たまに「美STORY」を手に取ってみてはいかがですか?
(小島かほり)
辻仁成VS.香山リカはある意味ビジュアルショック!!
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