夢や希望には金がかかる! 人生の教訓はアンパンマンから学ぼう
――ママにならないと知らない世界。ママになっても戸惑う世界。それがお子さま連れ施設。大人も楽しめる? ぶっちゃけどのぐらいお金が消えて行くの? そんな疑問を解決すべく、既婚ライターNと3度の飯より結婚願望の強い編集Sが、家族4人を想定した上限金額1万2,000円(安!)を握りしめ、潜入取材へ! 今すぐお子さまを連れまわしたくなること、請け合いです!
今回のターゲットは、横浜・みなとみらいにある「横浜アンパンマンこどもミュージアム」。”土佐のウォルト・ディズニー”ことやなせたかし先生が作り上げた楽園です。
■やなせ王国では2歳も大人も同じ
まずはミュージアムエリアから下見開始。同ミュージアムはアトラクションが楽しめるミュージアムエリア(有料)と、ショップ&レストランエリアとで構成されています。ちなみにショップエリアは見るだけなら無料。ミュージアムエリアは……なんと入場料1,000円(2歳~)。この2歳からというところがミソ! なんといっても子どもたちは好奇心の移ろいが早い。アンパンマンに夢中になれるのは、せいぜい4、5歳までだから、ほかの施設みたいに「未就学児無料」なんて悠長なことが言ってられないのです! ということで家族4人で4,000円。「元を取らねば」とはやる女二人を乗せ、アンパンマンエレベーターは順路に従い、3階なかよしタウンへと向かいます。
■入館すぐが最大の撮影ポイント
扉が開くと同時に飛び込んできたのは、ズラリと30体以上並んだアンパンマンとその仲間たち。家族ごとに撮影可能なミュージアム最大の撮影スポットです。ここを逃せば最後、落ち着いて写真を撮るなんてことは不可能! おのずと譲り合いが見られ、ヒキで全体を入れるか、センターのアンパンマンと我が子を中心に撮るか、お父さんたちが激しいジレンマにさいなまれている間に、ウロチョロ動く我が子の姿はそこに無し。ここで構図の迷いは禁物です!
3階は砂漠、氷河、祭りなど各種テーマにそった模型にひそむアンパンマンたちを”発見”して喜ぶ『はっけんジオラマ』がメイン。「砂漠や氷河は地球温暖化への提唱で、日本の祭りは伝統文化へのオマージュですよ」と勝手に決め込み納得する編集S。さらには「ほら、大人の膝の高さあたりに色々な仕掛けがあるでしょ。幼児目線で作られてますよね」と、説明を始める始末。「この飛び石を踏むと、鏡に絵が浮き出すんです!」「ここでパンをこねて、このレバーを回すと、ほら! オーブンに火がついたぁ~」しまいには「解説パネルを置かないのは、子供自身に遊び方を探させるためなんです!」と、マニア級の知識を披露してくれましたが、あまりの目のキラキラぶりに、なぜそんなに詳しいのかを聞けませんでした。
■やはり! ママたちの静かな戦いがそこに!
の精神が大事☆
3階の “アンパンマン号”は施設屈指の人気アトラクション。ママたちの熾烈な争奪戦が繰り広げられているので、気弱なママもここで”勇気りんりんりん”が必要です。ターゲットがよちよち歩き~3歳くらいなので、なんせまだ列を作って並ぶという概念がありません。そこでママがすかさず「●●ちゃん、前のお友達が遊んでいるから順番ね~。すぐ遊べるからね~」と発します。もちろん、その言葉の対象はわが子ではありません。周りの親へのけん制。アンパンマン号に乗っている方のママも、すかさず「今代わったばっかりだからね~。ハンドルくるくるしようね~」と応戦。子供を介しての逆”イタコ口寄せ”戦法による、絶対に負けられない戦いがあるのだ。ちなみに2階は子ども同士のバトルが始まる、キャラクターにちなんだ模擬商店ゾーンが……。ここもあそこもバトルで、疲労感がたまります。
■ランチで予算の大方を消費
ママ同士の厳しいやり取りを堪能したところで、しばし休憩を。ランチは、ショッピングモール内のカフェ『ジャムおじさんのパン工房』にて”ジャムおじさんのバスケット”(1,000円)を頂く。すでにこれで予算の3分の2を消化。店内ではパン作り工程を追ったDVDがリピートされ、啓蒙教育はぬかりなし。完璧なまでのやなせワールドにずるずると引き込まれながら、午後は最大の難関、ショッピングエリアに突入!
■油断するといくらでもお金を落とす、ショッピングエリア
「残り4,000円があれば、結構楽しめますよね」と余裕をかましていた私たち。しかし……やなせ帝国はプライスレスを許さなかった。ショップエリアは本や洋服、パン、おかしなどの物販から、アンパンマンと動画で合体できるDVDスタジオ、はたまた美容室まで総数20の店舗があの手この手で親子を誘う。「記念になりますよ」の合成DVDは3,800円、アンパンマンの背中に乗って、髪の毛をカットしてもらう理容室は通常カット4,200円! 『おむすびまんのふっくらごはん工場』のその名も”よいこのなっとう”(2パック×3)700円。スーパーなら3パック100円でおつりが来るわ!
そんなこんなで、妄想家族を頭に浮かべて購入したのが、ドキンちゃんのカチューシャ(1,575円)、アンパンマンのペットボトルホルダー(子ども用、1,890円)、紙芝居(785円)です。4,000円という中で、実用的なものを選ぶと3つしか買えないという現実を目の当たりにし、静かにミュージアムを後にしました。ショッピングエリア内のプレイゾーンでは、お土産を買い漁る大人を尻目に、またしてもエンドレスに流されているDVDで、ひたすら『アンパンマン』の世界に没頭する子どもたちが……。帰り際に見た、その子どもと大人の背中合わせの反応に、すれ違う現代の親子事情を見た気がします。
「とにかくどこかで一服しないと現実世界に戻れない」と、向かいにファミレスを発見し、喫煙席のソファーに沈んだ私たち。疲労でもうため息しか出ない二人に、ファミレスのウェイトレスが一言「ただいまアンパンマンフェア開催中です」。マジすか! もう、助けて! アンパンマーン……。
かけあってました。
心が汚れていますよ
<邪念なく楽しむポイント>
1)最寄駅の新高島を出ると”近道はこちら”という立て看板がある。これに従って歩くと到着するのは地味目なドキンちゃんゲート(裏口)なので注意が必要。
2)ベビーカー置き場は広さバッチリ。ただしマクラーレンかコンビばかりなので、目印は必須。
3)平日ならば、授乳室及びオムツ替えシートは余裕あり。混雑期はここでも”絶対に負けられない戦い”が繰り広げられる予感。
4)ミュージアムエリアの『高知アンパンマンミュージアムエール交換ギャラリー』はミュージアム一番の肝であるのに見ている人がほぼいない。やなせ先生が「手のひらを太陽に」を作詞したとか、三越のロゴ”MITSUKOSHI”をデザインしたとか、ファンならずとも食いつきたくなるネタの宝庫であるのに……。
5)「一緒にDVD作ろうよ」など言われると大変困るため、経済状態の異なるママ友とは来ない方が無難。お孫さまのためなら年金も惜しまないじぃじばぁばと来るのがベスト。
6)突如始まる園内のショー。お子さまたちも大喜びかと思いきや、いきなり眼前に現れる動くアンパンマンに怯える子多数。MCのお姉さんの煽りにも、お子様のリアクションは薄い。ここはひとつ寛容に、そういうシステムであることを教えたい。
<今回の架空お子さま連れ散財メモ>計1万2,250円
アンパンマンこどもミュージアム入場料 1,000円×4名
ジャムおじさんのバスケット(昼食)1,000円×4名
ドキンちゃんのカチューシャ 1,575円
アンパンマンのペットボトルホルダー 1,890円
紙芝居 785円
※今回は、予算をオーバーしてしまいました。初回だから、見逃がして~!!
(西澤千央)
やなせ先生が意外に冷静な一言を……
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