出稼ぎセレブ・後藤久美子が新刊『ゴクミ』で神になった!?
後藤久美子が22年ぶりとなる著書『ゴクミ』(講談社)を出版した。その最終章に収録された対談で、写真家がこう言った。
「久美子さんのどこにマイナスのポイントがあるの? と思いますよね。可愛い子供達と素敵なダンナ様がいて、お金持ちだし、頭いいし、性格もいいし、スタイルいいし、きれいだし、ね」
この一言こそ、まさにこの本のスタンス。久美子ちゃんすごい、久美子ちゃんきれい。いや、それじゃ足りない。久美子最強、久美子は神!! そんな感じ。この本を読んでいると、だんだん神様ゴクミ様から施しを受けているような気分になってくるから不思議である。
その一因に、この本は雑誌に掲載されたインタビューをまとめたものであることが挙げられる。「著書 後藤久美子」と言いつつ一人称で書かれていない。ライター目線、御用媒体目線。だからゴクミ礼賛がすごい。
「”幸福”に完璧な形があるのだとしたら、それは、久美子さんが手にしているそれなのかもしれない」
あまりのヨイショっぷりにちょっと高揚した。洗脳第1段階。
でもって、肝心のゴクミ本人の言葉は、翻訳調というか古典劇調だ。たとえば、「日本に帰りたいと思ったことはなかったか」と問われて、
「ないわ。だって、私の帰る場所はここだもの。(中略)私の帰る場所は、私の家族のいるところなのよ。あのね、私の人生なんか、まったくおすすめできないわよ。だって大変だもの」
口調がヘンじゃないか。まー、本人がこう言ったんだから仕方ないですが、生身の人間の声のような気がしない。神の声のようだ。洗脳第2段階、幻聴。
写真もふんだんに掲載されている。確かにゴクミは美しい。しかし、美しすぎて日本人なんだか外国人なんだか男だか女だか分からない、いろんな意味でニューハーフな写真もたくさんあった。この現象、叶恭子や杉本彩、武田久美子など”美の伝道師系”タレントによく見受けられるんだけども、美を追求すると別の生命体になっちゃうみたいね。ゴクミもしかり。いや、ゴクミは彼女たち以上に完璧だ。人類の神秘を体現している。神だ! と幻覚を見て洗脳完了。
F1レーサー・ジャン・アレジと一緒になり、海外に移り住んで約15年。たまに日本に帰ってきては、迷える民のために御姿を示し、かと思ったらすぐにあちらの世界に戻って御子を育てる。「一生働き続けるのなんてイヤッ!」「一生主婦ではいたくないッ!」――そんな女子たちの夢とも言えるいいとこどり生活を送るゴクミ。ヨーロッパの太陽の下、ほどよく天日干しされて、地黒かセレブ焼けか区別がつかなくなり、美・強・幸のゴクミエッセンスだけが残った。
たまに見るからありがたい。たまにしか見せないからボロが出ない。もっともこのスタイルを並のタレントが真似すればすぐに「あの人は今」状態になってしまう。そうならないのはやはり唯一無二の容姿と強烈な個性があってこそ。ゴクミは”オスカー版野沢直子”である。野沢直子もたまに見るくらいでちょうどいい。ゴクミはずっとこのスタンスを貫いてほしい。くれぐれもアメブロでママ日記を書いたりして庶民に媚売らないように!
(亀井百合子)
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
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