好調な『リアル・クローズ』ネット通販を支える、現代の消費傾向とは?
「つまらない服を着ていると、つまらない人生になるわよ」
『リアル・クローズ』(関西テレビ)劇中で、黒木瞳扮する神保美姫が発した言葉だが、同ドラマの通販サイトで扱う商品はどんなものなのか。商品をチェックしてみると、取り扱いは9社14ブランドで、雑誌を始め百貨店やファッションビルで目にする20代向けのブランドが多かった。特に目新しいブランドではないが、今回の手法でなぜ売れたのだろう。
長年ファッションの定点観測や分析を行う、「ACROSS」編集長の高野公三子氏は、「東京ガールズコレクション(以下TGC)と同じで、見たものをすぐ買わせるビジネスモデル。地上波テレビなので、より影響力が強いのでは」と見ている。実はこのドラマ、2008年9月に単発ドラマとして一度放映されており、PC・携帯サイトと連動して同様の手法が行われている。当時の提携先は、TGCを主催する「ブランディング」(旧社名ゼイヴェル)。この手法は、TGC的な発想とともに出発していたのだ。
さらに高野氏は、「今の日本人の消費傾向とうまく合致した」手法と分析。現代の消費傾向には3つの特徴があると指摘する。
まず1つ目は「ユビキタス消費」。エキナカやネットオークションなど、買い場のインフラが強化されたことで、服はいつでも誰でもどこでも買えるようになった。日本人の大多数にとって、”オシャレ”はもはや特別なものではない。どのブランドも似通ってファッションが画一化している背景もあり、消費者はこのドラマのように”タレントが着ている”など何かきっかけがないと購入に至らないのだという。「05、06年あたりから、マネキンが着る服をそのまま買う消費者も現れており、トータルコーディネートで提示されると魅力的に映るのでは」と高野氏。PCや携帯からすぐに買えるユビキタス性に加え、動機付けも満たしているというわけだ。
2つ目は、「瞬間消費」。これは分かりやすく言えば、新しい靴が合わなかったので、たまたま目の前で売っていた靴を買ってしまった……というような衝動的消費である。ドラマを見ながら気分で購入できる点が、消費者のムードに合っているようだ。
3つ目は「香里奈が着てた服を買っちゃった」と、ブログネタや友人との話のネタとして購入する「ネタ消費」。購買層は公開されていないが、「特に、流れてくる情報を真に受けてしまうような、テレビ局がターゲットにしやすい層なのでは」と高野氏は語る。
今回、関西テレビは、提携先を「ブランディング」から100%子会社の「関西テレビハッズ」に変えている。その理由について関西テレビの大平氏は、「システムから発送まで一貫して責任の所在を明確にするため」と説明し、関連会社収入に関しては「もちろん放送外収入として意識している」と話す。
同サイトが扱うブランドの中には、10代から支持されているものもある。通販が公共の電波を介し、経験や判断力に乏しい未成年にとってより身近なものとなることについてはいかがか。
「親権者の同意を得ない未成年の契約は取り消せる。取消の要望があった場合は速やかに対応できる体制」(大西氏)
関西テレビは、同様の手法を拡大する考えは現時点ではないとしているが、周囲はこの新ビジネスをどう見ているのだろうか。
民放連広報の斎藤信吾氏は、「公序良俗に反しなければ、民放も一企業なのでビジネス選択肢の一つとしてあり得る」と述べた。様々なメディアミックスを試みる、通信販売大手の「ジャパネットたかた」は、一切ノーコメント。テレビショッピング最大手「ジュピターショップチャンネル」は、「もしも同様の連動企画を、民放テレビ局から持ち込まれたら」という問いに対してのみこう答えている。「当社の商品を影響力の大きい地上波で訴求し、新たな顧客を開拓できる可能性があるので積極的に検討したい」(同社経営企画部中村久美子氏)。
現段階では慎重に見守りつつも、広告収入が落ち込むテレビ業界でこのビジネスモデルが成功例となれば、追随する他局も出てくるだろう。地デジ化の波が後押しし、アパレルに限らず様々な業種が参戦することも想像に難くない。しかし、業界内で期待されるビジネスとはいえ、専門家が指摘するような公共性やモラル的な問題を放置したままでよいのか。今一度、慎重な議論が必要だろう。
(佐藤ちひろ)
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