成金・神田うの、エッセイからにじみ出る結婚生活の苦悩!
いつのまにか女子的な価値が上がっていて、「アレッ」と思うことがある。たとえば女子アナ。局アナ時代はどちらかというと安っぽいイメージで、キャピキャピ騒いでパンチラ写真を撮られたり下半身ネタを暴露されたり、オジサン週刊誌にとってはうまいネタだが、まあ「女性が憧れる女性」とはちょっと違う。ところが、寿退社したとたんに、女性ファッション誌で連載を持ったりエッセイ本を出したりと市場価値急上昇。こんな人だったっけ? と思うが、要は金持ちのダンナを捕獲したという狩猟能力が認められたのであろう。女子アナの真価は獲物の大きさによって決まるのである。
神田うのもいつのまにか価値が上がっていた人のひとり。昔を思い起こすと、どうしても神田うのがいわゆる”セレブ”だったとは思えない。実家はそれなりに裕福らしいが、タレントとしては三流、無知と若さだけを武器に言いたいことを言っては敵を増やし、それを見た視聴者は心の奥底で「天罰よくだれ!」と呪いの言葉を唱える(あくまで比喩です)。言ってみれば悪役タレントだった。
ところが、いまじゃ公式ブログで「××さんの取材をさせて頂いておりましたよ」なんて、おセレブ語をお上手にお使いこなし(笑)、「UNOさん憧れます☆」「UNOちゃん大好きです」なんてコメントがつく(ブログのいいところは、どんな有名人にも支持者がいるということを確認できるところですね)。メディアの扱いもタレントというよりは成功者的な扱い。株価急騰もいいところである。
しかし、神田うのが女子アナとは違うのは、玉の輿婚の力で上昇したのではなく自分の力で成り上がったところ。彼女が上りに転じたのは、まさしくストッキングのデザインという実業に手を出してからである。その一点においては、手厳しい局たちも納得するところではないだろうか。
そんな神田うのが、先日フォトエッセイ『ミセスUNO』(KKベストセラーズ)を出版した。「いきなりですが、私、決してスーパーウーマンなんかではありません」という書き出しに、「別にスーパーウーマンだなんて思ったこと1回もないし!」と大人げないツッコミをつい入れたくなる本書。前半のファッションに関するエッセイははっきり言って読めるページがない。”若いうちから本物に触れていると感性が養われる””ワンピースは旅のマストアイテム””着ない洋服はリメイク”……と、まるでファション誌のやっつけ仕事のような話ばかり。
味わい深いのは、”ダーリン”こと西村拓郎氏や結婚生活に関して書かれた後半部である。
基本的にはとても優しい人だけれど、時として、家でも「オレが一番。黙ってしたがえ!」みたいなところが顔を出す。
彼はとてもジェントルな人だと思っていましたが、実際は、そうでもない部分もあることを、私は婚約してから知ったんです。いったん怒りの導火線に火がつくと、とてもきつい口調になって、手がつけられなくなったりとか、意外と男尊女卑的な考えを持っていたりとか……。
(喧嘩は)うのの方が強そう? いいえ、とんでもございません。彼はひじょうに亭主関白で、主張も強い人。いったん「こうだ!」と言い始めると、絶対に折れない。
100回離婚したいと思った。
などなど、11のエッセイのうち、ネガティブな文章が含まれている項が7つもあった。結論としては「いろいろあるけど、やっぱりラブラブ」と主張したいようなのだが、蜜月感がまるで伝わってこない。読めば読むほど「苦行」とか「忍耐」とかそんな熟語が行間からじわ~っと浮かび上がってくる。自分で充分稼いでるし、本当は結婚しなくてよかったんじゃないの? そう思わずにいられない。それでも別れず、夫婦としての幸せを築こうと務めているところに、神田うのという人間の深さを生まれて初めて感じた。
幸せは、誰かに依存することによって与えられるものではないと思います。
結婚しさえすれば幸せになれるというわけではないんです。
この夫婦がどういう生活を送っているのか、どういう絆で結ばれてるのか、実際のところはこちら側にはわからない。ただ、少なくとも神田うのについて”やりたい放題のパンスト成金”という認識しかなかった人からしてみれば、「うのもダンナに苦労してんのね」と思うだけで生きる勇気がわいてくるはず。「人生不公平なことばかり、セレブたちよ地獄に落ちろ!」、そんな卑屈な思いにかられている人はぜひ一読してほしい。
(亀井百合子)
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
オレが一番と思わないと、元カノに刺されないよ!!
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