「心配すると顔が悪くなる」、黒柳徹子が指南するアラフォー処世術
梨花が結婚である。そのニュースについた見出しが、「負け犬返上!」「”負け犬”梨花、交際8年! 結婚へ」。おいおい、「負け犬」って、2004年の流行語大賞トップ10に選ばれた言葉ですよ。もうとっくに死語だと思っていたら、スポーツ紙の見出しでは今だにOKらしい。オジサンの間では日本語として定着してしまったのか。
それでは露骨すぎるからと、女性誌などでポジティブな呼称として使われているのが「おひとりさま」。こちらもオリジナルは99年にジャーナリストの故・岩下久美子さんが使いだした言葉ということで歴史が古い。当時は未婚・既婚に限らず”自分ひとりの時間を大切にする女性”という意味だったが、近頃は単に負け犬を体よく言い換えただけの言葉して使われている(そもそも「負け犬」自体、オリジナルとは意味合いが全く変わっている)。
で、飽きもせずまだこんなムックが出ていた。上野千鶴子責任編集の「よみものmarisol 上野千鶴子特別編集 おひとりさまは最強の人生!!」(集英社)。「最強の人生!!」とエクスクラメーションマークをふたつも付けてわざわざ誇っているところが返って哀愁たっぷりなのだが、それはいいとして、注目は「おひとりさまでカッコいい女性として憧れるロールモデル」として掲載している黒柳徹子インタビュー。黒柳徹子といえば、芸人殺し、究極のマイペースとして最近は若者にも大人気の人。おひとりさま論でもその手腕を存分に発揮していた。
インタビュアーは上野千鶴子。子どもを産まなかったことを残念に思わないかと問うと、
「思わないです。どうしてかっていうと、母が『あなた、子どもなんか産まないほうがいいわよ。子どもって大変よ、ひとりのほうが楽でいいんじゃない」ってよく言ってましたから。私も、「そうか」って思って。素直ですから(笑)。自分で決めて生きてきたから、子どもを産まないと、負け組に見られるということもなかったし、面と向かってオールドミスとか言われたことはなかったです。毎日、なんかウキウキして暮らしていました」
上野が「アラフォーが挨拶代わりに『ひとりで寂しくない?』『老後どうするの?』と振られる」という話を持ち出すと、
「許せない。親戚でも何でもない人が、ほんとに許せないわ。そんなこと言われても、自分の身に起こっていることじゃないと思ったほうがいいわ(笑)」
介護の心配については、若い友だちをつくり携帯メールをするようにしているという。根底にあるのは”人生ってなるようにしかならない”。
「だから、アラフォーの皆さんもあんまり心配しないでね。心配するとね、顔が悪くなる(笑)」
このインタビューを読んで思った。きっと黒柳徹子はどんな人生であってもきっとこの調子で生きるであろう。もしかしたら若いときはそれなりに悩んだのかもしれないが、根本は変わらないはず。他人さまに振り回されない究極のマイペース、これぞ真のおひとりさま道。
結局、負け犬だの婚活だのアラフォーだの肉食だのおひとりさまだの、そういう言葉に振り回されて思い悩み、将来を憂いている人は、たとえ結婚したとしても子どもはどうする、子どもが産まれたらお受験はどうする、近所の奥さんはどうだこうだ、と他人の人生と比べて心休まる日はこない(筆者もその一人である)。何かを手に入れたから解決するという問題ではないのだ。振り回されやすい私たちに必要なのは、徹子の心なのである。
もう”負け犬””おひとりさま”という言葉は封印しよう。世の中の女性は、”負け犬”か”勝ち犬”かで分類されるべきではない。”テツコ”か”非テツコ”か。そう分類すべきだ。未婚も既婚もめざすはテツコ女子(注・鉄子ではない)。迷いなきテツコの道を歩め。つっても、本当に巷に徹子があふれたらたいへんだろうけどね、やっぱり。
(亀井百合子)
テツコ女子のバイブルです
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
【バックナンバー】
・ブログでコツコツ稼ぐダルビッシュ紗栄子のサエコノミー
・小室はちょっと……カヒミ・カリィが全盛期に語ったあんなコト
・自分磨きは無駄!? 電撃妊娠中のくらたまが書いた『婚活』を読む