平子理沙という鏡が写す、現代の”美の方向性”
女性から圧倒的な支持を受け、プライベートや美容法をまとめた本も大ヒット。ビューティー記事からファッション記事まで女性誌で見ない日はない、まさに時代が求めているミューズ、平子理沙の人気の秘密をさぐっていきたい。
■完璧なセルフプロデュース力
彼女が、著書『リトルシークレット』(講談社)の中で紹介しているコスメの数々はオーガニックを中心としたナチュラルなものが多いが、コスメプランナーの私から見ても、どれも自分自身でかなり試したものを紹介している、といった印象を持つマニアックなものが多かった。自分が納得しないものは使わない、というプロ意識を感じるセレクトになっている。まだ日本での認知度が低いオーガニックコスメや、逆輸入された日本のコスメからドラッグストアで購入できるものまで、彼女なりのセレクトが光っていた。
ここまで自分の愛用品を惜しげもなく見せられるのは、どこかのブランドのCMに出演していない、”自由の身”だからだと思う。いち早く、”ビューティー”に活路を見出し、それを大事に守って来たという点では、本人を含め事務所の戦略もひときわ際立っているといえる。
彼女の美しさ、かわいさには「生きている」というエネルギーがみなぎっている。無理なダイエットをせず、筋肉をつけすぎないためにワークアウトはしない、好きな肉は我慢せず食べるなど、おおよそ巷で騒がれている無理なダイエットとは対極にある生活をしているのである。そんな自由な感覚と自分の身体の状態を冷静にみられる客観性が、彼女の完璧なセルフプロデュースを可能にするのと同時に、他のモデルにないパーソナルな魅力を放っているのである。
■「エイジフリー」という感覚
著書の中で「アラフォーやアラサーという言葉も個人的にはネガティブに感じる」「エイジレスっていう言葉も好きじゃない」と語っているが、年齢を区切ったり年齢で諦めたりするということは彼女の中ではありえないのである。「いくつになっても自分の好きなことをすればいい」という天真爛漫さ、”後進に道を譲らない現役感”というのが、38歳にして「ガールな感じ」をキープさせている秘訣だろう。一般的には、年齢を重ねるごとに自分をアピールしていくことに謙虚になりがちだが、”かわいい”をキープすることはある意味の図々しさを兼ね備えることでもあるのだ。
若い頃は、CDデビューなども果たしたようだが、あまりうまくいかないとわかると、悪あがきをせずモデル業にしぼった。しかもビューティーのモデルとしても確固とした地位を築くに至るには、年齢を超えたニーズを「平子理沙」に読者も出版社も感じているからに他ならない。
肌だけでなく、身体もとても38歳とは思えないほどの”ガール”ぶりである。女性誌の中で惜しみなくセミヌードを披露しているが、クビれるところはクビれているのに、うっすらと柔らかそうなお肉がついている。なんだか見ているだけで癒される「母性」さえ感じてしまう。圧倒的な女性としての美しさが濃縮されている美しい身体は、同性からみても惹きつけられる。「ガールな雰囲気」と「妖艶さ」「母性」など女性のあらゆる魅力が多面的に混在しているのが大きな魅力といえる。
■そっくりそのまま真似るのは危険
「大人かわいい」という言葉が女性誌などでよく使われているが、大人といわれる年齢になっても「かわいい」を維持するというのは相当なテクニックや美容ケアが必要とされる。一般的にはある程度の年齢になったら「かわいい」よりも「綺麗」を目指したほうが楽なのである。
血眼になって美容に心血を注ぐというのも、殺気立ってビューティどころではなくなるが、平子理沙のように好きなものを食べながらかわいさを保つというのは一般人には不可能に近い。
彼女の著書を読んで容易に彼女のようになれるものではないことを、確信した。
彼女の幼い頃の写真が掲載されていたが、超がつく美少女であるし、なにより両親の美しさがズバ抜けているのである。そういう意味では、DNAがすでにビューティーサラブレッドである平子理沙は、一見身近に感じるがそっくり真似をできるレベルにない「ビューティーエリート」なのである。
私たちができることは、その「ガーリー」のエッセンスや「ハッピー感」を自分なりに取り入れることぐらいなのかもしれない。というのも平子理沙が今の女性達に支持される一因に、”ナチュラル”という一般的には取り入れにくい美容姿勢があるから。今まで分かり易く”盛った”り、”デコ”ったりして、人造的に美を追求してきた女性たちが、疲れ果てた先に求めたのが「平子理沙」なのだ。
平子理沙が時代のニーズを表現している存在だとしたら、それは女性たちにおける”美”への理念が目に見えるだけの「造形美」から、雰囲気や温かみといったその人自身がもつパーソナルな「ニュアンス美」を求めるように変化して来たことを表しているのかもしれない。
恩田 雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトの他、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事についての執筆も行っている。
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