女子における毛穴ケアの”可視化”願望はどこへ行く…
夏になると毛穴が目立ってくるという”毛穴伝説”を皆さんご存知だろうか。実際に多くの女性誌で毛穴ケアの特集が組まれたり、ドラッグストアでも毛穴系商品が人気を集めているところをみると、この時期に毛穴で悩んでいる女子が多く存在することが推測できる。
そもそも美容雑誌のモデルのような、毛穴がない肌というのはあり得ない。出版業界で当たり前に行われている「修正」という技術に惑わされてはいけないのである。人間なのだから、毛穴は絶対に存在する。毛穴は目立つか、目立たないかの2つに1つだ。
だが、美しくなりたい女子にとってそれは別問題。毛穴が目立つということは、女の粗が目立つということだ。だからこぞって女子達は毛穴ケアにいそしむのである。
今回は、そんな毛穴問題についてヒット商品を紐解きながら考えいきたい。
■毛穴ケアのブームのけん引役「ビオレの毛穴パック」
ここから、毛穴ブームがスタートとしたといっても過言ではない、誰もが一度は使ったことがある「ビオレの毛穴すっきりパック鼻用」は空前のヒットとなった。それまで、毛穴の汚れや皮脂が存在することは知られていたが、それを見える形で示した、いわゆる「可視化」したことに、この商品のヒットの秘密がある。
「自分の毛穴の中に、こんなものが……」という落胆にも似た感情を、怖いもの見たさで毎回味わうのが癖になり、いつのまにかそれが快感へと変わっていく。むしろあまりとれない時など、ちょっと残念だったりするから面白い。本来皮脂が溜まっていない方が良いのに、ごっそり取れた時のほうが達成感を感じるというあべこべな感覚を感じさせる商品だ。
最近では、この「毛穴すっきりパック」を使う前に毛穴を緩めて浮かび上がらせる「角栓クリアジェル」が人気を博している。そこまで徹底的に毛穴を綺麗にしたいのか、という毛穴への女子の執念を感じさせる一品だが、昨年のアットコスメで人気総合ランキング位1位を獲得したというから、毛穴に悩める女子の救世主となっていることが伺える。
この商品を併用することで、皮脂の「取れた感」をより感じられることになり、女子の願望はますます膨れ上がっていくのだ。
■そんなに厚くない「面の皮」!?
はがすタイプの毛穴ケア商品に続いて人気なのが、「ポロポロ系」の毛穴ケア商品だ。ジェルを顔に塗り、クルクルと軽くマッサージをするだけで、ポロポロと黒ずんだ垢のようなものがでてくる。こちらも目に見えるという、面白さからヒットにつながった。
しかし、あの「ポロポロ」と出てくるものが、全て自分の角質だと思っている人がいるかもしれないが、あれは全てが角質ではなく基材が皮膚にあるアミノ酸やタンパク質と反応して固まったもので、いわば消しゴムのカスのようなもの。取れた「ポロポロ」が全部角質だったら、どれだけ厚い皮膚なんだ、という話である(笑)。
いずれにしても、肌から直接角質を取り除くので、使った直後に効果を感じられるところが商品購入のリピートに繋がっている理由であろう。市販の高濃度のピーリングで肌から角質を取り除くよりも、優しく肌を傷つけずにピーリングできるように設計されている。
とはいえ、こちらもやりすぎは禁物。各メーカーから出されている商品の使用方法を守って週に1~2回のスペシャルケアとして上手に取り入れていくことが大切だ。
■美人肌の決め手は自制心
毛穴ケアの代表格となっている、この2つの手法。いずれも”結果”が見えることで、頻繁にケアする人が多いようだ。
しかし、何ごともやりすぎは禁物である。健康の秘訣は「腹八分目の食事」というが、美しくなるためにも同じことがいえる。「肌八分目の美容」をどれだけできるかにかかっているのだ。美肌の敵だからといって、「汚れの落ち具合が見える」という快楽に負けて皮脂や角質の取りすぎは肌にとってはよくない。
結局、自分の肌をしっかりと客観的に見て肌に必要なケアしているというより、「綺麗になりたい」という欲が過剰なケアをさせてしまうのである。「美人肌」になるということは、知性と自制心が必要になるのだ。
だからこそ、人の肌でその人の品格が分かってしまうのである。
ピーリングのやりすぎで肌が薄くなり乾燥してしまっている肌や、ボトックスを打って不自然なハリというより「つっぱり感」を感じさせてしまう肌は、なんとなく一生懸命過ぎてトータルとして美しくない。
美しさとは、もう少し安心感を伴うものである。見ている人が心地よいと感じる視覚的な美しさに加え、その美しさを作り出す精神の健全さに人は本当の意味で「美しい女性(ひと)」という賞賛を贈るのだ。
今の自分を全否定する美容ではなく、肯定しながらも少しずつ綺麗になっていく「美のコツコツ貯金」で綺麗になっていく方法が一番ゆるぎない美への近道なのである。
恩田 雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトの他、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事についての執筆も行っている。
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