“婚カツ”女子は必見、主婦の”奥行き”を描く「デスパレートな妻たち」
――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディディールから文化論をひきずり出す!
意外に思れるかもしれないが、アメリカでは高学歴の女性ほど専業主婦の道を選ぶ傾向にある。しかしその一方で「育児に追われ女を捨てている」「世界が狭い」「ダサくて、つまらない」というネガティブなイメージがいまだ根強く定着している。
そんなアメリカで5年前、「専業主婦は本当につまらない人間なのか?」という疑問を投げかけたドラマが登場。ブッシュ元大統領の妻、ローラ夫人も大ファンだとカミングアウトした『デスパレートな妻たち』である。
郊外の住宅街に住む専業主婦メアリーが何の前触れもなく自殺した、というところからドラマはスタート。平凡な専業主婦だと思われていたメアリーは、実はとてつもない秘密を持っており、彼女の死の真相に迫るご近所仲良し主婦仲間たちも、それぞれが強烈な秘密を隠し持っている、という設定で、物語は「この世のしがらみとオサラバした」メアリーの解説やコメントを交えながら展開していく。
英語の「dirty laundry」とは、「汚れた洗濯物」だけでなく「内輪の恥や秘密」という意味もある。日々、汚れた洗濯物と戦っている専業主婦は、実はとてもドラマチックな日常を送っているのだとドラマは強調する。
また、日本では「実際に主婦が着たらドン引き」な登場人物たちのセクシーな普段着も、アメリカでは「安い服でもカッコよく、セクシーになれる!」と女性誌がこぞって特集。アラフォー女性たちのファッションをリードしているのだ。
■この作品を踏み台に!? 出演者も次々セレブの仲間入り
殺人、失踪、病気などのシリアスな展開に、不倫などの恋愛模様が絡み合ったローラーコースターのようなドラマの内容も、シーズンを重ねるごとに深みが増し、演じる女優たちも世界的に大ブレーク。
「狙った男は手段を選ばずゲット」のイーディはヒール役だが、ドラマにとって最高のスパイスであり「自分に正直」と人気ナンバーワンのキャラクターへと成長。演じるニコレット・シェリダンは、45歳とは思えぬほどセクシーで奔放な恋愛スタイルがゴシップ誌をにぎわしている。
超わがままな成金の元モデルだが、因果応報を体得するガブリエルは、キュートで憎めないキャラクターとして人気が鰻上り。演じるエヴァ・ロンゴリアは7歳年下のプロ・バスケ選手と再婚し、先日発表されたバニティーフェアの「最もセクシーな女性」にも、アンジェリーナ・ジョリー、スカーレット・ヨハンソンなどともに堂々とランクイン。すっかりセレブの仲間入りだ。
子育て中の主婦ならば、誰もが感情投入できるリネットは、ドラマ上で最も波乱万丈な人生をおくっている。夫に代わり働きに出る下りは、日本では違和感があるかもしれないが、アメリカでは選択の一つとして普通に受けいられている。演じているフェリシティ・ハフマンの夫、名優ウィリアム・H・メイシーは、「交際して27年だが、いまだにべた惚れ」と公言しており、理想の夫婦として人気を集めている
シングルマザーのスーザンは、思い込みが激しく危なっかしすぎるタイプの女性。奇跡的に真っ直ぐに育っている高校生娘とは恋愛相談ができる仲で、アメリカでは「理想の親子」とされている。演じるテリー・ハッチャーは元ボンドガールで、お高いイメージがあるが、幼い頃叔父に性的虐待されていたことなどを告白し話題となった。
家事全般を完璧にこなすスーパー主婦のブリーは、外見は完璧だが、中身はボロボロというギャップが大うけ。演じるマーシア・クロスは、45歳で初めて産んだ双子の子供の育児と、癌闘病している夫の看病に奮闘している。
日本では覗き見サスペンスとして人気を集めている「デスパレートな妻」だが、実はアメリカではコメディ・メロドラマとして放送。こんな内容なのに人気があるのは、やはり優れたコメディーセンスとリアリティーが随所にちりばめられているからだ。
例えば、完璧主婦のブリーが「よりによって」夫の葬儀真っ最中に義母と大バトルを展開したり、専業主夫となった夫にマイホームを「汚屋敷」にされキレたリネットが、「懲らしめに」と夫が大嫌いなネズミを放ったり。このようなリアリティ感あふれるコメディシーンを組み込むことにより、女性だけでなく男性のファンも獲得しているのである。
日本でも現在シーズン4が放送中(NHK-BS2)。専業主婦のネガティブなイメージを、ある意味ポジティブに塗り替えた「デスパレートな妻たち」から、日本の女性が学べることは意外と多いのではないだろうか。「いずれは専業主婦になりたい!」と夢見て婚活している女性も、本来の専業主婦の姿を学べる作品。一見の価値あり!である
堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。
『デスパレートな妻たち』と『アリーmyラブ』を観る―彼女たちの「修羅場」
海外ドラマばっかり見て、現実逃避しないように
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