ベッキーと野村克也監督の本を読んで、人間について考えてみた
「元気の押し売り」と有吉弘行が命名したベッキーの格言集『ベッキーの心のとびら』(幻冬舎)が売れている。10万部を突破したそうだ。帯には「元気をもらっちゃいました」などと読者の声が書かれている。どうも世の中には、元気を押し売りされたい人が多いらしい。だいたい、元気をもらいたい人ほど他人に元気を与えたがる人が多いので、押し売りの輪の中で”元気”は循環されているようだ。需要と供給ってうまくできてる。
と、傍観者を気取っては見たものの、季節は春。新学期、新生活を迎え、五月病予防としてベッキーからカラ元気をもらってみたい。そんな人も多いのではないでしょうか。ということで今回はお悩み相談。回答は『ベッキーの心のとびら』からの引用と、それだけじゃ心許なかったので、尊敬する野村克也・東北楽天ゴールデンイーグルス監督(以下、カッツー73歳)の著書『野村の極意』(ぴあ)からの引用を添えることにした。ではどうぞ。
Q.仕事が忙しいのでいつもイライラして、人間関係もうまくいかず、毎日疲れてへとへとです。(千葉県・Aさん)
【あなたにぴったりのベッキーの言葉】
――「忙しい」という言葉は使わないようにしています。
“忙”という漢字は”心”を”亡”くすと書くからです。
「忙しい」ではなく「充実」
「疲れた」ではなく「がんばった」
口から出る言葉はハッピーな響きの方がいいです。
【あなたにぴったりのカッツーの言葉】
――「人間」という字は「人の間と書く」。
人の間にあってこそ、
人のためになってこそ、
人間と呼べる
人生論の定番”漢字のなりたち”ダブル攻め。「充実」と書いて「貧乏ヒマなし」、「人間」と書いて「馬車馬」と肝に銘じて、一生懸命働く、それしか解決策はないようです。
Q.人の幸せを妬んでばかりいます。(千葉県・Bさん)
【あなたにぴったりのベッキーの言葉】
――人の幸せの量はみんな同じ。
大事なのは幸せをちゃんと
“幸せ”と感じられているか。
幸せを”当たり前”と感じてしまってないか。
そこの違いで”幸せそうな人””そうでない人”
変わってくるんだろうなぁ。
【あなたにぴったりのカッツーの言葉】
――人間はどん底まで落ちれば、考え方が変わる
ベッキーの教えは分からないでもないが、やっぱりちょっとキレイごとのような気がする。その点、野村監督の言葉は迫力がある。監督は「苦労人からしか、名言は出ない」ともおっしゃっている。他人を妬むようなセコいやつは、まだ本当の苦労を知らないのだ!
Q.最近、目のまわりの”ちりめんじわ”が気になります。(千葉県・Cさん)
【あなたにぴったりのベッキーの言葉】
――しわは、いっぱい笑ったしるし。
【あなたにぴったりのカッツーの言葉】
――誠意を持ってオファーにいけば、きっと来てくれますよ。人間だもの
これだけは、曲がり角を曲がりきってない25歳の小娘に知ったようなこと言われたくないね! とカリカリしたら、「怒ったしわより 笑ったしわでいっぱい そんなおばあちゃんに 私はなりたい」なんて格言が出てきそうだ。
監督の言葉は、01年オフ、阪神タイガース監督の後任に星野仙一氏を推したときの言葉。小じわと何にも関係ないんだけど、「人間だもの」ってどこかで聞いたような。便利な言葉だよね、人間だもの。腹がたるむのも、人間だもの。しわができるのも、人間だもの。
こうしてみると、同じように見える格言でも、野村監督の方が含蓄がある気がする。監督の言葉のうらには、あんなことやこんな女房が隠れている。深い。もちろん、ベッキーもがんばっていることは十分伝わってくる。愛嬌と一生懸命だけで人気者になったタレントにふさわしい、好感度の高いへたうま人生論だ。どこぞの太った霊能者の説教を聞くよりは、かわいい分だけ得した気がする。
しかし、こういう本を読むと、いまいちノリきれないおのれの汚さを痛感して余計落ち込みますね。
(亀井百合子)
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
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