「ん~~~……感謝」 ピュア系俳優藤岡弘、の”面倒くさい”料理番組
今回ツッコませていただくのは、前回放送分のNHK『食彩浪漫』という番組。
毎回ゲストの手による料理を通して、その人物像に迫るといった構成なのだが、「挑戦する男 和の心をいただく」と銘打たれたこの日のゲストは、俳優・武道家の藤岡弘、だった。
そのあまりにピュアすぎる物腰に、意外にバラエティ出演が多い藤岡。最近でも『黄金伝説』(テレビ朝日系)で無人島生活を送るよゐこの激励のため島を訪れ、一緒に島の探検をしたりサバイバル料理を披露したり、『はねるのトびら』(フジテレビ系)でも、北陽、くわばたりえ、はるな愛らの作った手編みのマフラーなどから一番いいのを選べというのに、「スハー、どれも素晴らしいねぇ。これは選べないねぇ……」と、ピュアぶりを存分に発揮していた。今回はNHK。いったいどんな活躍をみせてくれるのか。
実は調理士免許をもつという藤岡、いったいどんな料理を披露してくれるのか。藤岡を前にしてワクワクする小林千恵アナウンサーの前で藤岡、ニンジンを豪快に手で折り、手元の味噌につけて、丸かじりする。大根も真っ二つに折って同じく丸かじり。そして、「ん~~~……感謝」と感慨深げにため息をもらす。一緒に付き合って丸かじりするものの、面食らった表情の小林アナ。かつて『美味しんぼ』で海原雄山が鉢植えトマトを出して「至高のサラダだ」とのたまったことがあったが、これが藤岡さんのいう「料理」なのでしょうか。すげーうまそうではあるけど。と思ったところで、このようなそのままかじるだけでおいしい大地の恵みを使って料理をしていくという。丸かじりは、フリだったのか。これが、藤岡ジョークなのか。
今回藤岡が披露してくれる料理は「雑穀雑炊」。雑穀を炊きつつ、大根やニンジン、里いもにコンニャクといった根菜中心の汁を作っていく。野菜汁のアクを取りながら、藤岡がぼそっとつぶやいた。
「……アク(悪)を取って、善を残す」
ダジャレ、出た! 正義の味方ギャグだ。さすが、仮面ライダー。自分でも、「仮面ライダーになっちゃうね」とフォローしていたが。
それにしても藤岡、たいていの番組でもそうだが、終始笑顔。やっぱりピュアで、いい人なんだろうと思う。加えて小林アナも、「はい」「ええ」「そうなんですね」と、相づちがいちいちいい人そうな感じで、善人どうしのかもしだす、フワッとしたやりとりの間が、おかしくてたまらない。小林アナ、先の「アク」のギャグを言ったときにも、「善と悪の……」と、普通に解説してたし。完成した雑炊を、「こういうのはねぇ、丁寧に食べないで……」と、藤岡が豪快にかっこんで、「こういう食べ方が一番おいしい」と言えば、「やってみます」と言うものの、チョロチョロチョロと、実に控えめなかっこみの小林アナ。『スタジオパーク』には、この空気はない。ゲストも司会者も、そろってピュアだからこその空気だ。
クライマックスは、食後のコーヒー。藤岡自らが手で豆を挽くところから始まる。挽く前にそのまま一粒かじり、手を合わせて、「おいしくなれよ……ありがとう、ありがとう」と、「感謝」。ガリガリ挽きながら、「……小林さんのために、おいしいコーヒーになってくれよ」とボソボソつぶやいている。松岡修造とかの”熱血バカ”とは違う方向の真っすぐさだが、これはこれで、真剣すぎて面倒くさい。ついでにいちいち名前のあとに「、」を入れなきゃならないのも。
出来上がったコーヒーを一気に飲み干し、目を閉じたまま、沈黙。しかも、15秒近くも沈黙。沈黙が解かれたかと思ったら、
「……ん~~~~~……」
至福の深いため息。そして、そのまま番組は終了してしまった。
肉体的にも精神的にもとてもよさそうな、藤岡流。しかし、一個一個、とても全部付き合ってはいられません。
(太田サトル)
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