アンタが言うな!? 『ガラスの仮面』作者が語る、連載再開の秘密
今回ツッコませていただくのは、1月9日放送分、『マンガノゲンバ』(NHK)。現在最もアツいマンガ作品やその作家を取り上げ、紹介していく番組である。
今回登場したのは、『ガラスの仮面』の作者・美内すずえ先生。同作は、1976年に連載開始後、20年以上のロングランを経て97年にいったん休載、そして08年に10年ぶりの連載再開を果たしたというなんとも波乱万丈な作品である。このような事情もあって、ファンならずとも注目の番組だったが、その中身は想像していたものよりもさらにすごかった。
「本当に最後まで描く気があるのか?」というのは、もはや読者の誰もが感じていることだが、そんな疑問をズバリ作者本人にぶつけてしまおうというのだから、大胆不敵な試みである。
番組開始早々、司会のキャイーン・天野が開口一番放ったのは、こんな質問だった。
「先生、何してたんですか?」
それに対する先生の返しがまた、スゴイ。
「ちょっとSFチックな話とか、古代の話とか、いろいろ描いててもう頭のなかが何万年単位になっちゃって(笑)」
「どんな都合のいい言い訳ですか!?(笑)」
すかさずツッコむ天野に、美内先生はさらに一言。
「私自身、あきらめたことは一度もないんですよ(キッパリ)」
実は、ラストシーンはすでに十数年前にできていて、それでもなかなか進まないのは「たとえば、東京から博多へ新幹線で行くゴールは決まってるんです。ところが、熱海あたりで台風にあって、米原あたりでおりて……みたいな感じに」などと、ヘンにうまい言い訳が手をかえ品をかえ、次々に繰り出された。
そして、延々と語られたのが、「時間のかかる理由」である。
内容は「劇中劇がオリジナル」ということや、「何度も描き直す」ということなど、確かに気の遠くなるような大変な作業であった。その異常にも思える強いこだわり、妥協のなさは、主人公の天才少女・北島マヤそのもののようでもあった。
しかし、面白いのは、話の中心となっているのが「いかにして物語が生み出されるか」ではなく、「いかにして滞るか」「なぜ進まないのか」という別の視点を掘り下げているところ。
フツウ、「生まれない理由」をここまで聞くインタビューはそうそうないが、実はファンがいちばん知りたいところも、やはりそこであり、痒いところに手が届く素晴らしい番組だったとも言える。
ところで、番組では触れられていなかったものの、美内先生といえば、ピースボートみたいな活動や宇宙的な思想(詳細不明?)などでも知られているが、そんな神秘を思わせるフレーズもところどころにあらわれていた。
「(連載再開したのは)”時”がきたんです」
「私もこのトシになるまで結末描いてないとは思ってなかった」
なぜか他人事のように語る先生。
そんななか、「作品の魅力の1つ」として分析された「タイムリミット(があるドキドキハラハラ感)」について、先生が語った一言。これだけはちょっと聞き捨てならないものだった。
「それは自分がいつも締め切りと戦ってますから(笑)」
!!! それならなぜなかなか続きが出ないのですか……。そのセリフ、美内先生と、同じく天才漫画家・冨樫先生(『HUNTER×HUNTER』がまたも休載中)にだけは言われたくなかったです……。
(田幸和歌子)
また買い始めちゃいました……
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