『ハンサム★スーツ』北川景子から見える、「外見」に対する本音と建前
――美人でない人=外見オンチが、「美の格差社会」の中で、自分らしく生き抜くためにはどうすればいいのか? そこいらの美人だけが取り柄のエッセイストには書けない建前抜きの恋愛論。
映画『ハンサム★スーツ』(監督:英勉、原作:鈴木おさむ) が公開中。
原作者いわく「コンプレックスを抱く人たちに向けたラブコメファンタジー」。『ブスの瞳に恋してる』の作者による、「人は本当に見た目じゃないのか?」に挑んだ作品だ。
主人公は、庶民的な定食屋「こころ屋」の主人・大木琢郎。33歳、身長163センチ、体重98キロ。料理と人柄で客には人気があるが、ブサイク、デブ、モテない。そんな彼がハンサムになれるスーツ「ハンサムスーツ」を手に入れ、憧れのハンサムライフへ。
キャスティングは、「ハンサムスーツ」を着た後のハンサムな光山杏仁役に谷原章介 、ブサイクの大木琢郎役に塚地武雅(ドランクドラゴン)。
「こころ屋」の超美人アルバイトで、琢郎に一目惚れされる星野寛子役に北川景子。超カリスマモデル來香役に佐田真由美。仕事と性格は完璧だが、身長163センチ、体重83キロ。北関東訛りとおかめ顔の「こころ屋」のアルバイト橋野本江役に大島美幸(森三中)。
「外見オンチ」のキャスティングは難しい。タレントは今後の売り出しもあるから、男女問わず「外見オンチ」役はお笑い芸人が定番だ。今回もその定番パターン。
『ハンサム★スーツ』記者会見の様子
『ハンサム★スーツ』のオチを知って、浮かんだのがイソップの寓話「金の斧」。湖に落とした斧は金でも、銀でもないと答えたきこりに対し、精霊から「正直者だ」と三本の斧をもらった話だ。一方、わざと斧を落としたきこりは「金の斧か?」と聞かれ、「ハイ」と嘘を言って、自分の斧まで戻ってこなかった。
正直者にはさらに福がもたらされ、不正直者は今の幸せまで失うという教訓だ(くわしくは、映画を!)。
美人役の北川景子(1986年生まれ)は「ミスSEVENTEEN」に選ばれ、モデルデビュー。テレビドラマ『美少女戦士セーラームーン』で女優デビュー。テレビ朝日系『モップガール』で連ドラに初主演した。
『スポーツ報知』のインタビュー(「北川景子 外見より中身…今秋公開「ハンサム★スーツ」ヒロイン」08年3月10日) では、「衣装やメークできれいになっているだけで、美人と思ったことは一度もないです。モデル時代はチビ(身長160センチ)だと。顔がきついと言われるので笑顔がかわいくなりたいとか。外見のコンプレックスは人並みにいろいろあります」と答えていた。
キレイ系なのに、「美人と思ったことは一度もない」なんて、もったいない話だ。……というのは、わたしの建前的発言。「外見オンチ」を代表して、わたしが一発、蹴りを入れておく。確実に、「外見オンチ」組の好感度は下がった。
美人と思ったことがなくても、言われたことはあるだろう。人並みのコンプレックスというのも、「美のヒエラルキー」上位組が思っている人並みだろう。
だが、「北川景子×鈴木おさむ」の対談(『ダ・ヴィンチ』2008年12月号)中、「『私は中身を見てくれる人が好きです』というせりふが一番好きでした。私もそれがコンプレックスで、ずっとそう思ってきましたから。」(北川)とあった。
な~んだ! けっきょく美人だと思っているんじゃない。まったく、どっちなのかはっきりしろ~~~。
天然美人にしろ、人工美人(山中注:「美容整形&プチ整形」美人)にしろ、「美のヒエラルキー」上位組のフカ~イ、さらなる悩みは、天然ブスの「外見オンチ」には想像できない。「外見オンチ」とはコンプレックスの指向が違っているのだから、おそらく永遠の平行線だ。
また、北川景子は、ハンサムの条件として「生まれつき持っている外見的なカッコ良さではなくて、何か目標に向かって一生懸命に頑張っている人とか、人に対する思いやりがある人。そういう人がハンサムだと思います。以前から外見で人を判断したりすることはしないので、この映画に出る前からそういう風に思っていました」(シネマトゥディのインタビュー) と答えている。
北川は、2歳下の俳優・木村了との熱愛を「週刊文春」「フラッシュ」で報じられている。以前、ジャニーズのタレントとも噂されていた。木村了は「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」での審査員特別賞を受賞したほどの「イケメン俳優」だ。
『ダ・ヴィンチ』の対談では「塚地さんみたいな人がハンサムだと思うんです」とコメントしていた。たまたま熱愛報道で出てきた男が、たまたま、そうたまたま「思いやりある」イケメンだったのかもしれない。ここで「外見オンチ」男性との熱愛の噂が出てきたら、「外見で人を判断しない」発言にも説得力が増すのだが……。
「外見オンチ」のわたしに「人は内面が大事」と精神的価値観をとく男たちのパートナーはほぼ美人だった。顔が気になるから、精神論を熱く語ってくるのだ。
今回の作品について作者の鈴木おさむさんは「人は見た目じゃないけど、見た目でもあるってことも言ってるつもり」と言っている。
「笑顔になれる人と一緒にいたい」という超美人”北川”の台詞通りの私生活を、大島美幸と送っている(と、伝わってくる)鈴木おさむさん。「誰が言っているのか」は重要である。「外見オンチ」応援夫妻が次にどんな表現をしてくるか、とっても興味がある。あと、北川景子の熱愛相手も……。
山中登志子(やまなか・としこ)
1966年生まれ。編集家。占いスペース「桜」(新宿西口)、「通販あれこれ」経営。お茶の水女子大学卒業後、リクルート「就職ジャーナル」、「週刊金曜日」編集部に在籍。200万部ベストセラー『買ってはいけない』の企画・編集・執筆者。『外見オンチ闘病記』(かもがわ出版)出版後、外見オンチ応援カウンセラーとして活動開始。(※占いスペース「桜」でご予約の際、「サイゾーウーマンを見た」と言っていただいた方は、どの先生の鑑定も10%OFFになります。)
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