トシちゃんの性の目覚めは××? このジャニーズ本がヤバい!
ネット書店アマゾンの和書で「ジャニーズ」を検索すると、その数200以上。この数字を見てもおわかりの通り、ジャニーズにまつわる暴露本やタレントによるエッセイは多い。ここでは、数あるなかでも、”センセーショナル”なものを、プロ書評家・吉田豪が選出する!
(以下、吉田豪氏・談)
まずはジャニーズ公式本から、フォーリーブスが大人気だった頃に出された『ジャニーズ・ファミリー〜裸になった少年たち〜』(1)。これは、芸能ジャーナリストが著した本ですが、ジャニーさんについて〝公式〟に語られているクダリが、ものすごいツボに入った1冊でしたね。最初に「育ての親ジャニーさん」という章がちゃんとあって、「ジャニーさんについてまず触れておかなければ、この本は先に進まない」と始まっている。ものスゴく気になって読み進めるとわずか数行で「彼が、何故、急に来日したかについては、この際、あまり深く探っても意味はない」とか言い出して、そんなに触れにくいなら、触れなきゃいいのに(笑)。
当時から、ジャニーさんには扱いづらい空気があったということなんでしょうね。中身はありきたりなタレント本ですが、北公次がおりも政夫を殴りつけたという描写があって、「殴りながら、彼らはさわやかだった。殴られながら、彼らは憎み合わなかった」と、殴り合いが鉄壁のチームワークを誇るエピソードとして書かれている(笑)。そして、「仲間とは何だろう、友とは何だろう。何もかも捨てて、裸になってぶつかり合う潔さではないか」とあって、「裸になった少年たち」というタイトルがついた、と。別に深い意味はないんだろうけど、今読むと意味深に思えてしまいました。
次は近藤真彦の『いま俺、やるっきゃない 真彦十八歳』(2)。この本は、マッチから読者の女の子に向けての手紙というテイストで書かれていて、その内容がかなりラジカルなんです。「俺、君にお礼を言わなきゃ。コンサート見に来てくれてありがとう」とか、「俺、わかってたんだよ。マッチって叫んでくれたのが君だってこと」という”特定個人へのメッセージ”ばかり。すべてが「俺と君」という形式なんです。「君と出会えたことが一番嬉しかったんだ」って、出会ってねえだろみたいな(笑)。しかも最後は、「君」との結婚生活について語り始めて、完全に読者と婚約状態。過剰に幻想を与えすぎていて、見ているこちらが怖くなってしまいましたね。
マッチと双璧をなしていた田原俊彦の『とびっきり危険』(3)も秀逸。彼の幼少期は、母子家庭ということもあってかなり荒れていて、そのときのことを告白しちゃってます。ちなみに、出版当時はまだジャニーズの第一線級アイドルとして活躍していた頃。それなのに「初めてたばこを吹かしたのは小学4年の時」とか「性の目覚めはお医者さんごっこ」など、結構きわどいことをサラリと書いているんです。
そして、極め付きは、小学生のときにクラスで財布がなくなったというエピソード。貧乏だったがゆえに担任教師から疑われてしまった彼は、その身の上を顧みながら、「いつかみんなを見返してやる」と、切々と語っている。マンガやドラマでよくある話で、まるで作り話のよう(笑)。ジャニーズに限らず、この当時の男性アイドルたちは元ヤンキーという経歴を持っている人が多く、『成りあがり』(小学館)の矢沢永吉に憧れていて、いつか芸能界でのし上がってやるという野望を胸に抱いているのですが、それを顕著に示している作品といえます。
タレント本の醍醐味は”双方向”の読み合わせ
さて、ジャニーズ本の醍醐味ともいえる非公式本では、名作・諸星和己著『くそ長〜いプロフィール』(主婦と生活社)。これは光GENJI時代に書かれた公式本『根性』(4)と読み比べてみると、かなりおもしろいんです。特に、初めてローラースケートをはいてテレビに出演した彼が、転んでしまったときのエピソードは最高。そのときの彼とジャニーさんとのやりとりが全然違っていて、『根性』では、「ジャニーさん、俺、転んじゃったよ」と悔しがるカー君を、ジャニーさんが優しい言葉で慰めます。しかし『くそ長〜い〜』では、悔しがるカー君はジャニーさんに、「お前がこんなものを履かせるから恥かいたんだ、この野郎」と暴言(笑)。暴露本と公式本のディテールの違いを顕著に見せてくれました。
最近ブログを開設した「みなしごアイドル」こと豊川誕の『ひとりぼっちの旅立ち』(5)。彼は2、3歳で親に捨てられていて、本当に壮絶な人生を送った人です。同書では「孤児院で中学生の先輩に、トイレに呼び出されて、性器をくわえろと言われた」みたいな衝撃の告白が書かれていて、もちろん「ジャニーさんに蹂躙されて、何をされているのかわかっていた」という定番の内容もある。実はこれ、「数時間に及ぶインタビューをまとめた」と書いてありますが、豊川氏は「自分は語っていない」と否定されていますね。ですが、この本のポイントはそこじゃなくて、彼の生い立ちやキャラクター全般についての特異性を浮き彫りにしたことだと思っています。なにしろマイケル・ジャクソンへの弟子入りを笹川良一に頼むべく直談判する話や、オウム以前の麻原が空中浮遊できると聞いて会いに行く話とか、そんなネタばかりが詰まってるんですよ(笑)。
そして、やはり、データハウスから出版された暴露本シリーズも外せません。僕は、1作目の『光GENJIへ』(北公次著)から最後の『ジャニーズの逆襲』(ジャニーズ著)まで、すべてを揃えたのが自慢。「これで〝役〟がつく」みたいな(笑)。すべて揃えてみると、徐々に内容が薄くなっているのがわかって、特に、末期に出版された『ジャニーさん』(鶴田康文著)なんて、マンガなんですが、本当にお粗末なデキ。そして、巻末では「ジャニーさんぬいぐるみ」というグッズが紹介されている。これは出版社が勝手に作ったようで、まったく似ていないんですが、実際に通販などで売られていたそうで、怖いもの知らずというか、なんというか……。
ジャニーズ関連本は暴露的な部分ばかり話題を集めますが、実はそれ以外にも楽しいものはたくさんあるんです。そして、大切なのはその両方に目を通して、中間のスタンスを維持することで、そのほうがより著者であるタレントのことを理解できると思いますよ。
(談)
吉田豪(よしだ・ごう)
1970年、東京都生まれ。緻密な事前調査と巧みな話術で「最強のプロインタビュアー」として名高い評価を得ているカリスマライター。近著に『続・人間コク宝』(コアマガジン)など。
(1)『ジャニーズ・ファミリー〜裸になった少年たち〜』
和泉ヒロシ/オリオン出版(76年)/690円
当時、「第一線で活躍していた芸能ジャーナリスト」(プロフィールより)による、初期のジャニーズ事務所を綴った貴重な1冊。
(2)『いま俺、やるっきゃない 真彦十八歳』
近藤真彦/集英社(82年)/880円
近藤真彦の全盛期に出版された自叙伝……とされているが、特定の相手に自分の思いを伝えるという、ひとりよがりな内容。
(3)『とびっきり危険』
田原俊彦/集英社(86年)/980円
デビュー7周年を記念して出版されたエッセイ。帯文句に「いいのか、ここまで告白して……」とあるように、過激な少年時代を告白。
(4)『根性』
諸星和己/集英社(90年)/税込880円
当時大ブレイク中だった光GENJIの、全集シリーズのひとつ。内容は、メンバーとの仲良し自慢など、至ってフツーのアイドル本。
(5)『ひとりぼっちの旅立ち』
鹿砦社(97年)/税込1000円
著者クレジットが明記されていないが、現在実業家として活躍する豊川誕の半生を記した本。オウム真理教・麻原彰晃など、意外な人物が登場。
※紹介した書籍の価格は、発売当時の表示価格です。現在では絶版のものもあります。