セレブって、本当に楽しいの?
近年、日本でも海外のセレブが注目を集めている。女性ファッション誌には、著名な女優やセレブのプライベートファッションが特集され、昨年11月には日本初の海外セレブゴシップマガジン「GOSSIPS PRESS」(トランスメディア)が創刊、競合誌も多数登場している。
そもそも”セレブ”とは、名士や著名人を指す英単語「Celebrity(セレブリティ)」を省略した言葉。ニューヨーク在住のコラムニスト・黒部エリ氏によれば、海外では日本とは少し異なり、有名であれば芸能人でなくともセレブと呼ばれるのだそうだ。
「芸能人はもちろん、著名な政治家や財界人なども『セレブ』と呼ばれます。芸能人に限っては、かつて『スター』という呼び方のほうが一般的で、熱愛や結
婚・離婚などは報じられても、今のように私生活のファッションまでも取り上げられることは、多くありませんでした。ですがその後、芸能ゴシップがエンター
テインメントの大きな要素となって、話題に事欠かないヤングセレブの私生活が注目されるように。そして、98年頃にスキャンダラスな私生活が取り沙汰され
るブリトニー・スピアーズが出現したあたりから、パパラッチの数も尋常ではないほど増え、爆発的に『セレブ』という言葉が広まったんです」
では、なぜ芸能ゴシップが注目されるようになったのか。雑誌やラジオなどでも活躍し、人気サイト『ABC振興会』を運営するハリウッド在住のセレブ通・D姐氏は以下のように語る。
「2000年代初頭のアメリカは、同時多発テロやイラク侵攻など、暗い影を落とすようなニュースが続きました。そこで芸能人ゴシップのような、”どうでも
よいニュース”が喜ばれるようになっていきます。そんな中、『セレブ』という言葉が一般に浸透していき、空前の”セレブブーム”が到来したんです。現在で
はもはや『文化』と呼べるまでになっています」
そんな話題を集めているセレブには、2つのタイプが存在する。まずは、過去のスターと同じく、演技力や歌唱力、そして美貌といった・才能・によって注目
された人物。ブリトニー・スピアーズなどがこれに当たる。そして、突出した才能があるわけではなく、”家柄や話題性”のみによってセレブになったパター
ン。パリス・ヒルトンなどがこのタイプということになる。
「パリスのようなセレブたちは、クラブやイベントの広告塔的な役割を果たしています。有名な彼女たちを会場に呼ぶことでパパラッチが集まり、媒体に紹介
される。そのため、招待されたセレブたちはVIP待遇を受け、その上、主催者側から高額のギャランティが支払われるようです」(黒部氏)
また、芸能人のセレブにはランクが存在する。
「日本で言う”一流芸能人”“B級アイドル”という感じで、アメリカの芸能人セレブたちにもアバウトですが、Aリスト、Bリスト、Cリストというランク
があります。例えば、アカデミー賞クラスはAリスト、顔は知っているけど名前があまり出てこない人はCリストといったところです」(D姐氏)
広告塔的な役割に加えて、知名度によってランク付けされるという現実。そうなれば、セレブたちには話題性が常に求められることになる。当然、耳目を引くための行為はドンドンとエスカレートしていくことに……。
「『セレブ』の意味を説明するときによく引き合いに出されるのが、歴史学者であり、弁護士でもあったダニエル・ブアスティンの『セレブとは、有名である
ことで有名な人物』という皮肉を込めて定義した言葉。つまり、知名度こそがセレブをセレブたらしめている要因なのです」(同)
有名になるための近道はセックステープの流出?
つまり、セレブたちにとって知名度こそが命。そのため、海外のセレブを語るときに欠かせないのが、一般常識を逸脱したお騒がせ行為だ。代表格ともいえる
のが、セックスビデオの流出だろう。『One Night In
Paris』で一世を風靡(?)したパリスをはじめ、最近では、上図にも登場するキム・カーダシアンも、ラッパーの彼氏と”聖水プレイ”に興じるなどの過
激なシーンを撮影したセックスビデオが流出している。そして、特筆すべきなのは、これらのビデオによって彼女たちの知名度が飛躍的にアップしたということ
だ。
「パリスのときには『CBS』『ABC』『NBC』というアメリカの3大ニュースにまで報道され、アッという間に彼女の名前が広まりました」(映画ライター・山縣みどり氏)
そのため、『話題作りのためにパリスやカーダシアンは、セックスビデオをワザと流した』という噂も根強いが、ハリウッド俳優らからは彼女たちに否定的な意見も出ている。
「セレブ予備軍である新進スターの子たちは、よくパリスと比べられるのですが、ほとんどが『一緒にしないで』という反応をします。彼女たちにすれば、『クラブにも行かないし、セックスビデオなんか撮りもしないから』という思いなのでしょう」(山縣氏)
とはいえ、ブームそのものは衰えを見せていない。現在のアメリカでは、一般人が出演して私生活を見せるリアリティ番組が大流行。ローレン・コンラッドのようにこうした番組に出演し、大ブレイクしてセレブとして注目を集めるようになっている。もちろん、実際になれたとしても、当然その実情は厳しい。
「アメリカのエンタメ業界では『セレブはもはやひとりの人間ではなく、巨大なコーポレーションだ』と言われます。つまり、セレブは生きている集金装置で
あり、何万人もの人間たちが関わっているということです。そのため、もう普通の人間としては生きられないし、そこからドロップアウトすることも容易ではあ
りません」(黒部氏)
セレブによる薬物使用や飲酒でのお騒がせ行為には、そんな背景やプレッシャーも少なからず影響しているのだろう。月並みかつやっかみに聞こえるかもしれないが、「どんな世界にも苦労はある」ということだ──。