サイゾーウーマンコラム植木等に憧れて……2,000万円営業マンがお笑い芸人になったわけ コラム [連載]平成ろくでなしブルース 植木等に憧れて……2,000万円営業マンがお笑い芸人になったわけ 2011/02/21 21:00 平成ろくでなしブルース (C)山田参助 年齢:42歳 職業:お笑い芸人兼お笑いプロダクション経営 年収:200万 家族構成:妻一人 生息地:目黒区 青いジャージに手ぶらで表れた原西和也(仮名)さんは、かつてボクシングでオリンピック候補になった経歴もあるお笑い芸人さん。芸人だけあって、広島なまりの話し方と日に焼けた人懐こい笑顔に引きつけられます。ボクサー引退後はサラリーマンとして2,000万円まで稼いでいたのに、今は貧乏なお笑い芸人をやっている、その人生に迫ってみました。 ――お笑い芸人になろうと思ったきっかけは? 原西和也氏(以下、原西) トヨタの中古車販売会社で年収が2,000万円にもなったころに、大きな交通事故にあって臨死体験をしたんです。それから、人間いつ死ぬか分からないなら子どものころから夢だったお笑い芸人になろうと思って。大先輩、植木等さんに憧れまして。 ――風貌はちょっと植木等に似ていますよね。飄々としたところとか。ところで貧乏暮らしの中でも、再婚されたそうですね。 原西 はい、おかげさまで仲良くやってます。新薬を飲む治験のアルバイトで行った先で、事務所になんか優しそうな子がいるなぁ~って話しかけたがきっかけです。お笑い芸人は食えないのも知ってますから、嫁には「あんたの好きにすればいい」と言われてます。まぁ、その前の結婚は1カ月で離婚しましたので……。 ――最初の結婚が1カ月で終わってしまった理由はなんだったでしょう? 原西 前の嫁には若い頃に一回振られて、自殺まで考えたほど好きだったんです。女の人は金にならない男が嫌いなので、たかが専門学校卒のサラリーマンなんて甲斐性がないと思われたんでしょうね。でも独立して会社を作って2,000万円くらいの収入になったら、「商売成功していて稼いでるらしいじゃん」って向こうから電話がかかってきたんです。うれしくて結婚しました。でも結婚してみたら、もうどうでも良くなっててすぐ離婚です。 ――原西さんはかつて不良だったそうですね。 原西 不良っていうか、あの時代の広島ってみんな悪くて小さい頃から日本刀とか持ってケンカするのが普通だったんですよ。みんなで長ドスみせあって、どれがよく切れるか自慢しあったり。でも高校受験してみたら、悪すぎるって言ってどこも受け入れてくれる学校がなくなって。1年浪人したら、やっと一校だけ「ボクシングをやるなら」と受け入れてくれたんです。後で知ったんですが、その当時、不良をボクシングで更生させる活動を地元でやっていたんです。 ――ボクシングは強かったんですか? 原西 強かったですよ。悪い奴の方がやっぱりボクシングは強い。ケンカ馴れしてますからね。その当時は、相手を倒して鼻血がばーっとでたときの快感というか。自信満々なやつの表情がだんだん不安になる変化を見ることがたまらなくて。勝ち続けて、オリンピックの全日本候補になって推薦で大学に行くことになったんですが、嫌で逃げちゃったんですよ。 ――なんかテンコ盛りな人生ですね(笑)。かつてお笑い芸人のプロダクション、人力舎にいたことがあるとか。 原西 大学は逃げたので先生にボコボコに殴られたんですが、高校は卒業させてもらえたのでいいんです。よく「お前の人生はめちゃめちゃだ!」と言われますよ。人力舎では社長に可愛がってもらって伝説のバカ芸人と呼ばれてました。100万円渡されて、「なんかあったら、俺がケツもっちゃるから、思い切りやって来い!」って言われて子ども用の三輪車で日本横断しました。いまどきケツ(責任)もってくれるなんて言ってくれる人いないですよね。そんな社長に会えて俺はラッキーでした。 ――今は芸人のほかに、芸能プロダクションもやっているんですよね? 原西 芸能プロは儲かってないですが、9人の芸人がみんな育つまで続けようと思ってます。社長として所属タレントの出演交渉をしたりとか、とにかく必死です。夜遅くに所属芸人の出演依頼なんかも入るので電話も24時間体制で受けてますし。空いた時間にネタを考えたり……。毎朝起きると、今日はプロダクションの社長? それとも芸人かな?とどの仕事をするのか自分でも考えるくらい忙しい。仕事が入り混じっているので、ほとんど朝から夜までフルで働いてます。 ――実際、中古車の営業とかやればもっと稼げるのに、そこまでお笑いにこだわる理由はなんでしょうね? 原西 小さいころからの夢っていうのが一番ですが、やってみると舞台にでるってすごい勇気がいるし、それに絶対に笑わせないといけない。ボクシングの試合と同じ緊張感があるし、ここ一番の勝負っていうのが多い。びびったら負けです。でも、舞台に出てお客さんをどっかんって笑わせたとき「俺って生きている!!」って分かる。ぶわって血が流れているのを実感する。だからお笑いをやめられないんでしょうね。芸能界の仕組みは一通り分かったので、芸人にこだわらずお笑いがついてくる仕事ならなんでもいいです。お笑いセミナーとか、お笑い実演販売とかね。 ――中古車販売を辞めないで続けていれば良かったとは思いませんか? 原西 「会社辞めなけりゃ良かったのに」とよく言われます。でもずっと会社にいる人を見ていても、ため息ばっかりで楽しそうじゃない。贅沢な生活がしたいわけじゃないので、人とかお金とかにも執着がない。それに芸人だから「馬鹿だな~」って人に笑われても別に平気ですし。 ――今後は何をしていきたいですか? 原西 お笑いというくくりの中で成功すればいいと思ってます。自分も笑って相手を笑わせて、お金が儲けられればいい。面白いことを考えて、自分が楽しくて生きてるなって感じる。相手も喜んでくれて俺もうれしければ、それで十分です。営業はトヨタで2年やったら分かったけど、お笑いはまだ分かった気がしないんです。まだまだやり続けたいですね。 ■今回の迷言:お笑いのためなら、金も名誉も時間もいらない (カシハラ@姐御) 『営業は感情移入』 お金より大事なものがあるって言ってみたい 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます】 ・年収1,000万円から借金400万円…… 瞬間風速で売れた漫画家の現在 ・遺産を食い潰し成功セミナーに心酔…… 平成のろくでなし像に迫る ・裁判、ドラッグ……伝説の子役、マコーレー・カルキンの数奇な俳優人生 最終更新:2019/05/17 20:51 次の記事 『あらびき団』に出演した堂本剛、その”計算”を崩したパフォーマー >